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現実感がない人の自己喪失:依存と孤立の中で揺れる心


発達早期にトラウマを経験した人は、神経が過敏に反応するため、極度に敏感な体質を持つことがよくあります。こうした人々は、環境が自分に適していない場合、常に体が緊張し、凍りついたような感覚に陥ることがあります。その結果、自分の感覚や感情が麻痺し、筋肉や皮膚の感覚が曖昧になり、時には自分の体の存在すら感じられなくなることがあります。

 

このように体の感覚が遮断されてしまうと、現実に手を伸ばそうとしても、その瞬間に心が閉ざされてしまい、再び内なる空想世界に引きこもってしまいます。この状態が続くと、まるで魂が体から抜け出すかのように、自分の身体と心が分離し、現実の世界から遠ざかるようになります。そうなると、彼らの意識は別の領域に入り、物理的な世界から解放された魂は、どこまでも自由に漂い、見える限りの場所へと行けるように感じることがあります。

消えゆく感覚:トラウマが引き起こす身体感覚の分離と存在の曖昧さ


人間の体は、生命の危機に直面すると、強烈な衝撃によって全身が硬直し、あるいは極度に伸び切ってしまい、まるで体がバラバラになるような激しい痛みに襲われることがあります。このような痛みを感じたとき、人は戦うことも逃げることもできなくなり、その結果、体が感じる痛みの感覚を切り離すという防衛反応が働きます。

 

外傷体験をした人が適切なケアを受けられない場合、この防衛反応は持続し、体は常に緊張したり、伸び切ったりした状態が続くことがあります。そのため、しだいに自分の身体感覚を失い、体がどのように感じているのか分からなくなることがあるのです。こうした感覚の喪失は、心身の分離を引き起こし、外部の不快な状況や嫌悪刺激が続くと、自分の存在自体が泡や霧のように薄れていくように感じられることもあります。まるで自分が消えてしまうかのような感覚に陥ることは、現実とのつながりを弱め、さらに体と心の距離を広げてしまいます。

 

このような状況が続くと、体の感覚と心の状態が断絶され、日常生活の中で自分自身を感じることが難しくなります。

自己喪失と孤独の狭間:トラウマがもたらす心の混乱


自分の感覚が分からなくなると、それは心と体がトラウマの影響を受けている状態です。このとき、脳は常に緊急事態にあるかのように反応し、心は混乱に陥ります。一人になると、自分自身の軸が定まらず、何をどうすればよいのか分からなくなり、現在の瞬間に集中しようとすると、突然恐怖が襲い、落ち着きを失います。どんな行動を取ればいいのかすら判断できず、自己感覚が完全に喪失してしまうのです。

 

自己感覚を失った人にとって、自分が誰であるかという感覚は、他者や外的な役割に依存するようになります。誰かと一緒にいるときや特定の役割を果たしているときだけ、自分の存在を確認できるのですが、一人になると、その感覚は崩れ去り、孤独や寂しさに圧倒され、自分が自分でなくなってしまいます。これは、内的な安定感や自分を感じる力が失われているため、一人の時間が苦痛であり、心が空虚になる体験を繰り返してしまうのです。

繊細な神経が抱えるトラウマと人との断絶


神経が繊細すぎる人は、対象喪失や否定的な感情、嘘、裏切り、見捨てられる体験といったトラウマに直面すると、その強烈なフラストレーションに耐えられなくなってしまうことがあります。このような状況が続くと、心は次第に壊れてしまい、他者とのつながりが感じられなくなり、社会的な交流システムが遮断されます。これにより、現実の世界や人とのつながりが消失し、まるで世界から切り離されたかのような感覚に陥ります。

 

この状態では、誰に助けを求めてよいのか分からず、周囲に手を伸ばそうとしても、孤独感はますます深まっていきます。いくら必死に頑張っても、他者との接点を感じることができず、結果としてどんどん孤立していくのです。こうした孤立感は、心の中で深い無力感と絶望感を引き起こし、他者との関係を築くことへの恐れや不安が強くなります。

凍りつく心と体:崩壊する現実感と孤立の中で


心が壊れてしまった人は、どれだけ必死に頑張っても、周囲からは思うように受け入れてもらえず、理解されないことが多いです。努力しても「様子がおかしい」「何か違う」と言われ、周りから疎外されるように感じてしまいます。そんな中で、この世界は彼らにとって冷たく、無情で厳しい場所として映り、心がますます崩れていくのです。

 

心が壊れてしまった人は、周囲の空気が異質に感じられ、目に映る世界もどこか現実味がなくなります。身体は緊張し、まるで凍りついたかのように固まり、自分の体の感覚すら曖昧になります。この感覚が続くと、現実とのつながりが完全に失われ、まるで体が重くなって動けなくなるかのような状態に陥ってしまいます。心身ともに疲弊し、社会との接点を失った状態では、外部からの刺激に対処することも難しくなり、自らの存在がどんどん希薄になっていくのです。

現実の乖離:身体感覚の喪失とネガティブ思考の悪循環


体が凍りつき、原始的な神経が働く慢性的な不動状態に陥ると、人間本来の性格や個性が失われ、まるで別人のようになってしまいます。頭の中ではネガティブな思考がぐるぐると繰り返され、前向きな考えや行動ができなくなってしまうのです。現実感が失われると、まるで世界から切り離され、一人ぼっちで取り残されたかのように感じます。周囲の世界は動き続けているのに、自分にはその現実がまったく実感として伝わってこないのです。

 

次第に自分の身体感覚すら分からなくなり、自分自身に対する意識も曖昧になります。周囲の世界は敵意に満ちた危険な場所に見え始め、恐怖がつきまといます。この不安定な状態の中で、現実から逃れるために空想や妄想に耽ることが多くなり、頭の中で考えを巡らせることに執着してしまいます。こうして、現実とのつながりがさらに希薄になり、心と体のバランスを崩していくのです。

他者に依存する生き方:自分を見失った人の脆い存在感


自分が自分でなくなってしまった人は、他者の欲望の中でしか自分を見出すことができなくなります。彼らにとって、大切な人がいなくなると、心細さに押しつぶされ、自己を保つことができなくなります。大事な人が去ることで、感情が消え去り、まるで自分の存在そのものが薄れていくように感じます。一方で、その大事な人がそばにいると、自分の存在感が再び生まれ、自由に生きられるように感じ、目標や生きがいが戻ってくるのです。

 

しかし、この状態は相手に強く依存した生き方へと繋がり、相手の顔色を常に伺うようになります。相手が喜ぶと、自分も幸福を感じるため、他者の感情に左右されながら生きることが習慣化します。さらに、自分が本当にやりたいと思う行動に対して、相手が喜びの表情を見せてくれると、自分の感覚が強くなるように感じますが、この感覚は非常に脆く、容易に崩れ去る可能性があります。つまり、他者に依存する生き方は、一時的な安心感を与える一方で、真の自己感覚を弱め、常に他者の反応に左右される不安定な状態を引き起こします。

現実感を失った人が求める安心と他者依存の罠


現実感を失った人は、環境や立場、人間関係が変わるたびに、自分の軸が揺らぎ、自分を見失ってしまいます。その結果、他者が自分の思い通りに動いてくれることを強く望むようになります。自分が自分であるためには、他者と分かり合えることや、理解されることが不可欠だと感じ、それを強く求めます。

 

彼らは、安心感や安全感のある世界を切望しており、特に大切な人に自分を理解してもらえないと、深い悲しみに陥ります。そして、その関係性に固執し、相手からの理解を得ることが唯一の心の支えとなってしまうのです。こうして、自分の存在感や安心感を他者に依存することで、さらに不安定な状態が続いていきます。

現実感の喪失と孤立:解離と空想に囚われた心の行方


 現実感を失った人が他者との関係を築こうとしても、うまく分かり合えないことが続くと、人との関係を深めることが次第に難しくなり、他者への興味も薄れてしまいます。現実の世界での生活が思うようにいかなくなると、苦しい状況から逃れたくなりますが、逃げ場がないと感じる人は、何をすれば良いのか分からなくなり、身動きが取れなくなってしまいます。頭の中には不安なことばかりが浮かび、気力も次第に失われていきます。

 

一方で、現実から逃避し、夢や空想の中で生きようとする人もいます。特に、解離傾向の強い人は、夢と現実、妄想と現実の境界が曖昧になりがちです。こうして、現実を生きていた自分が消え去り、ショックを受けて解離した後の自分を「本来の自分」だと錯覚してしまいます。身体は麻痺し、現実世界から離れたまま、空想や妄想に耽りながら一人で考え続けることが習慣化していきます。この状態では、心も体も現実に対して閉ざされ、孤立が深まっていくのです。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平

  

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