「守護天使オルファ」という言葉は、精神分析家シャーンドル・フェレンツィが用いた表現です。精神医学の観点から見ると、これは多重人格における内的な自己救済者や、解離性同一性障害において観察者や保護者の役割を果たす人格部分を指していると考えられます。また、自然崇拝の視点からは、自然界や宇宙を自由に飛び回る精霊や神霊のような存在とも結びつけることができます。ソクラテスが取り憑かれていたとされる「ダイモーン」も、善性あるいは悪性の超自然的存在として、このような神霊に相当します。
幼少期に非常に困難な状況に直面したとき、まるで宇宙の彼方から守護天使がやってきて、助言を与えたり、優しい言葉をかけてくれることがあります。また、大人になってからでも、衝撃的な事件に巻き込まれ、恐怖によって自己が崩壊しかけると、肉体から離れるような感覚の中で、守護天使に出会うことがあるのです。このとき、守護天使は魂の名前を与え、聖性を授けることで、再び肉体に戻る力を与えてくれます。
守護天使は、人格交代のプロセスを助け、多重化した解離システム全体を見渡し、把握する存在でもあります。また、差し迫った問題に光を当て、苦難に立ち向かうための知恵を授け、正しい方向へと導いてくれる頼もしい存在です。
身体変化に際する知性の働きは、外からの妨害が何もなければ休んでいる。暴行の一つ一つへの抵抗。(挑戦、理解の拒否。)この抵抗によって時間と空間が定まる。知性そのものは時間と空間をもたないゆえ、超-個人である。「オルファ」。
生命維持を「何物にも勝り」優先する固有の存在(オルファ)。この断片は守護天使の役割を演じて願望充足的な幻覚、慰撫的ファンタジーを生成し、外的感覚が耐えがたくなったときには、意識と感受性を無感覚化してそれに対抗する…。
心が頭の穴を抜けて宇宙にまで達し、はるかかなたで星のように輝いた。(これはある種の千里眼だが、攻撃者を理解するという範囲を超えていわば全宇宙を理解することで、あれほどの戦慄がこの世にあることを理解しようとするものだろう。)こうして人格の内部は、ショックの重圧のもとでも現世的存在になくてはならない利己的領域を残しながら全知を獲得する。この全知の断片は距離と明晰さを保ち、あらゆる相互関係を知っていることで、すべてが失われ何の望みもないように見えるときでさえ介入し救いの手を差し伸べる。星のかけらが宇宙の果てから一人の人間に目を停めた。自らに似てはいるがその運命と苦悩によって内省の機会を提供できる人、言い換えればただの攻撃(父親)ではなく善意とともに完全な理解を提供できるたった一人の人間である。これ以外のいくつもの断片だけでなくこの断片をだれかが信じてはじめて(言うならば頭の穴を通して片目で遠くの星を見ながら、他方の目で頭と心のなかの出来事を観察する。)
参考文献
シャーンドル・フェレンツィ:『臨床日記』(訳 森茂起)みすず書房
トラウマケア専門こころのえ相談室
井上陽平