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モラルハラスメントが夫婦関係と家庭に及ぼす影響


モラルハラスメント(以下、モラハラ)は、意図的であれ無意識であれ、他人を不快にさせる言動を繰り返す問題行為です。モラハラの加害者は、自分の感情を優先し、周囲の環境や人々の気持ちを考えずに行動することが多く、これはしばしば人格障害の一環として見られます。加害者は自分を特別視し、他者に対して厳しい態度を取ります。自分の利益を最優先し、他人を不当に扱う傾向があり、口は達者でも、建設的な話し合いができない一面があります。さらに、長時間の説教や威圧的な態度、無視などの行動を繰り返し、家族を自分の所有物のように扱いがちです。こうした態度は、他者の独立した存在としての価値を認識できない結果として生じます。

 

一方で、モラハラの被害者側にも問題がある場合があります。特に、他人の言葉を悪意的に受け取りやすい傾向があったり、通常であれば傷つかないような場面で過剰に反応してしまう人は、モラハラのターゲットになりやすいのです。このような人は、モラハラの加害者と共に過ごす時間が増えるにつれ、次第に大きな苦痛を感じるようになります。特に、家族内で加害者と同居している場合、加害者の帰宅時間が近づくと心拍が速くなり、身体が緊張してしまうことがよくあります。

 

被害者は、加害者の機嫌を損ねることを恐れ、相手の表情を読み取って「正解」を探り、予期せぬ事態に備えて生活するようになります。加害者を怒らせたくないために、たとえ相手が明らかに間違っていても指摘することができず、自分の意見を言うことを諦めて我慢することが増えます。その結果、被害者は心身ともに疲弊し、体調を崩してしまうことが多くなります。

 

このように、モラハラは加害者と被害者の両方に深刻な影響を及ぼし、特に家庭内では非常に大きな問題となります。被害者がその影響を認識し、適切な対処法を見つけることが、心身の健康を保つために重要です。

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モラハラする人の体の特徴


モラハラの加害者は、社会に出ると「スイッチがON」になり、職務に集中しているように見えます。そのため、一見すると非常に活躍しているように思えますが、実際は自分にとって不要な感覚や感情を切り離しているだけかもしれません。しかし、仕事が終わると、その抑圧された感情や体の疲労が一気に表面化し、家庭ではそのストレスを身近なパートナーにぶつけることで、自分を元気にしようとします。

 

このようなモラハラ加害者の身体的特徴には、常に首や肩に張りを感じ、腹部や眉間にも力が入っていることが挙げられます。彼らの体は過緊張状態にあり、筋肉が硬直しやすいのです。そのため、思い通りに物事が進まなかったり、不快なことや予期しない出来事が起きたりすると、ストレスが増大し、胸や喉が収縮して呼吸が苦しくなることがあります。このような体の状態がネガティブになると、自然とネガティブな思考が浮かび上がります。

 

心も体も苦しくなると、無意識のうちにストレスの原因を排除しようとし、物事を自分の思い通りに進めようとしたり、相手を説得しようとします。しかし、それがうまくいかずに相手と衝突すると、体はさらに硬直し、イライラが募ります。この結果、感情的な言動に走り、縮こまった身体を広げようとするのです。後になって冷静さを取り戻すと、自分の行動を反省することもありますが、1~2週間もすれば同じ行動を繰り返してしまう傾向があります。

 

モラハラ加害者は、非常に神経が繊細で、他人の視線や世間体を過度に気にし、人の顔色を伺うことが多いです。彼らは常に頭の中で「正解」を探し求め、些細なことにも過敏に反応する完璧主義者です。この過敏さが原因で、身体は常に緊張状態にあり、嫌悪刺激に対して筋肉が硬直し、脳は危機を感じて思考がグルグルと巡ります。この傾向は、強迫性障害に似た特徴を持っています。

 

例えば、家の中が整理整頓されていないと強い不快感を覚え、不潔なものに対しても激しい嫌悪感を抱きます。このような不快な状況が続くと、たとえ「大丈夫」と自分に言い聞かせても、それを抑えることが難しくなり、感情的な言動に走ってしまいます。しかし、相手との力関係によっては、感情を爆発させることができず、その場合は内心でうんざりし、気が狂いそうになったり、元気を失ってしまったりして、睡眠不足に陥ることもあります。

 

嫌悪感や不快な状況に直面したとき、彼らは「戦うか逃げるか」というストレス反応に陥ります。この反応は筋肉の硬直、自律神経系の乱れ、呼吸数や心拍の異常を引き起こします。さらに、人に責められたり拒絶されたりすると、強いストレスを感じ、身体中の筋肉が硬直し、関節や筋が痛くなることもあります。これを避けるために、彼らは家庭内で自分のルールやペースを他の家族にも守らせ、ストレスを感じない環境を作ろうとします。しかし、他者のルールや意見が持ち込まれることを極度に嫌い、我慢を強いられるとさらに筋肉が硬直し、自分自身が不安定になり、無気力に陥っていきます。

 

モラハラ加害者は、相手の態度によって簡単に感情や感覚が揺さぶられるため、相手の気持ちを冷静に考える余裕がほとんどありません。そのため、常に自分にとって都合の良いルールを押し付け、感情を抑えることなくそのまま表出させてしまうのです。

 

また、彼らは自分の劣等感を刺激されたり、批判されたと感じると、過去の嫌な記憶がフラッシュバックし、その相手に対して攻撃的な行動に出ます。不快な感覚が続くと、心がざわつき、冷や汗をかいたり、気分が悪くなって、じっとしていられなくなります。最終的には、自分を制御できなくなり、相手に対して暴力的な言動を取ってしまうこともあるのです。

モラハラ加害者と家庭内での夫婦関係


モラハラをしやすい人は、神経が非常に繊細で、自分にとって不快なことに耐えられない体質を持っていることを先に指摘しました。そのような人は、家庭でも職場でも、どんな環境においても、不快な状況が続くと次第に落ち着きを失い、自分一人で問題解決ができない場合には、パートナーを巻き込んでしまいます。

 

彼らは嫌悪するものを迅速に取り除き、不快な状況をすぐに解決したいという強い欲求を持っています。物事を迷いなく進めようとするため、パートナーが決断をすぐに下せなかったり、理解しがたい行動を取ったりすると、イライラが募ります。価値観の違いや話がかみ合わないことに対しても強い不満を感じ、自分は正しいと確信し、相手を責めるような言い方をしてしまうことが多いです。

 

さらに、相手を見下すような発言や思いやりのない言葉が次々と口をついて出るようになり、馬鹿にする態度がエスカレートします。こうした言葉のやり取りがエスカレートすると、耐えがたい怒りに達し、最終的には修羅場に発展することもあります。このような行動パターンは、モラハラ加害者の内に秘めた不安やストレスが、相手に対する攻撃性として現れる一例です。

 

 

モラハラをする人も、最初は謙虚で誠実な態度を見せ、結婚するまでは愛情深い一面を持つことが多いです。しかし、結婚後、特に子どもが生まれると、その愛情深さが次第に薄れ、彼らの本性が露わになってきます。彼らには理想的な家族像があり、結婚生活をその理想に沿って実現したいと考えます。そのため、自分の計画通りに家庭が進むことを望み、もし思い通りにいかないことが増えると、その苛立ちをパートナーにぶつけるようになります。

 

モラハラ加害者は、自分が困ったときにパートナーに助けを求めることを当然のことと考えています。自分が不快な状況に陥ったときには、それを解消してもらうためにパートナーに依存し、まるで子どものように甘えることがあります。この依存的な態度は、彼らが他者に対しても高い理想を押し付ける原因にもなります。

 

彼らは、自分が不快と感じることを避けるために、「こうあるべき」「こうしなくてはならない」という厳しい生活ルールを持っています。これらのルールに従って生きることを自分にも他者にも強いるため、パートナーに対する要求が高く、簡単には満足しません。その結果、彼らは家庭生活や夫婦関係において、自分が常に我慢を強いられていると感じ、自分の気持ちを押し殺していると思いがちです。

 

このような不満が日々積み重なると、彼らのストレスは限界に達し、ついには感情が爆発します。その際、怒鳴り声を上げたり、物を投げつけたりといった行動に出ることがあります。これらの行動は、モラハラ加害者が抱える内面的な葛藤や、彼ら自身の未熟な感情処理の結果として現れるものです。

 

モラハラ加害者の特徴は、夫婦関係にも大きな影響を及ぼします。彼らは一見、夫婦関係がうまくいくことに気を使っているように見えますが、パートナーが自分の「マイルール」から外れた行動をすると、途端に不快感を覚えます。例えば、家の中が整理整頓されておらず、汚れた状態が続くと、彼らの身体は繊細に反応し、胸の痛みや頭痛、胃の不調、ザワザワ感、冷や汗、血の気が引くといった体調不良が現れます。

 

さらに、不快感が強くなると、過去の嫌な記憶がフラッシュバックし、気が狂いそうになったり、じっとしていられなくなったりして、自分の感情や行動を制御できなくなることがあります。こうした感情の爆発を避けるため、彼らは問題解決を図ろうとしますが、思うようにいかないと自制が難しくなり、パートナーに嫌がらせをしたり、パートナーの両親や友人を巻き込んで文句を言うなど、平気で攻撃的な行動に出ます。

 

一方で、激しい感情が収まり平常心に戻ると、自分の行動を後悔することもあります。しかし、そうした行動にもかかわらず、パートナーに対して執着し、見捨てられることを極度に恐れる一面も持ち合わせています。

 

このように、感情のコントロールが難しいモラハラ加害者がいる家庭では、頻繁に喧嘩が発生し、その結果として、警察沙汰になることも少なくありません。彼らは、自分の激しい攻撃性が他者に向かうのを抑えようと、頭を壁に打ち付けたり、風呂場で叫んだりといった行動に走り、パートナーに恐怖を与えることがあります。不快な状況から抜け出せず、問題解決ができないと、彼らは追い詰められ、刹那的で破滅的な行動に至ることもあります。 

 

モラハラ加害者は、表面的には道徳的で優しい人物として振る舞い、思いやりがあり、スマートな自分を演じようとします。彼らは穏やかな雰囲気を保ち、人間関係を良好に維持することを望んでいます。しかし、内面ではプライドが非常に高く、自分が恥をかくことを極度に嫌います。周囲の空気を読みながら、雰囲気を良く保つために懸命に努力しますが、実際には嫌悪や不快なことに対する耐性が非常に低いです。沈黙に耐えられず、早口でよく喋り、口が上手いのもその表れです。

 

相手の態度が自分の期待に反すると、自分の「マイルール」を押し付けたり、うんざりしたりします。時には、その場で最適と思われる方法を模索し、問題を解決しようとしますが、必要と判断した場合は多少グレーな手段でも、周囲の目を気にせず実行します。また、相手が納得するまで説得を続け、問題解決を図ろうとします。

 

モラハラ加害者は、パートナーや子ども、被害者をまるでモノやアクセサリーのように扱う傾向があります。彼らは相手を罵り、「お前なんか生きている価値はない」などと過激な言葉を投げかけます。さらに、彼らは相手に対して過度な期待を抱いており、その期待に応えてくれないと「お前は役立たずだ」と言ってしまうこともあります。

 

このようなモラハラがエスカレートすると、ドメスティックバイオレンス(DV)に発展することがあります。モラハラ加害者が瞬間的な怒りに駆られ、手を出してしまうと、喧嘩がさらに激化し、暴力に繋がることが多いです。長期間このような関係に置かれた被害者は、加害者の表情や視線、声、話の内容、さらには足音にまで怯えるようになります。喧嘩と仲直りを繰り返す中で、加害者は被害者に対してマインドコントロールを行うような状況になり、被害者は次第に逃げ場を失っていきます。 

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

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