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自己愛性人格障害の顔つき


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 第1節.

自己愛性パーソナリティ障害の顔の特徴


自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)を持つ人たちは、単なる行動や性格特性だけでなく、時折外見的な共通性も持つことが研究で指摘されています。中でも、目の動きや顔つきにはその特徴が現れやすいと言われています。彼らの視線は、周囲の状況や人々の反応を鋭敏に捉えようとするものであり、そのために、どこか警戒しているかのような独特の目つきを持つことがあります。

 

この警戒心は、彼らの脳が周囲の情報を非常に鋭敏にキャッチし、それに基づいて「敵か味方か」、「興味を持てるものか」、「好き嫌いするものか」などを即座に評価しようとするためです。そして、何かの脅威や危険を感じ取ると、彼らの体は無意識のうちに防衛態勢をとります。具体的には、肩が上がったり、首が硬直したり、奥歯を強く噛み締めたりと、体全体に緊張感が現れることがよく観察されます。

 

トラウマを抱えた人たちの心の内側には、感じている痛みや苦しみ、過去の出来事への対処の仕方が反映されています。彼らは、自らが意識していない瞬間であっても、体内に刻み込まれた傷が再び痛みを伴って浮上し、それが焦燥感や不機嫌として表れることがあります。しかし、逆に外部からの圧力や批判を感じると、自己防衛のために怒りや投げやりな態度を取ることがあります。その背後には、他者からの安全な関係性や承認を求める心の動きが隠れています。彼らは自分の価値観を共有してくれる人々との関係を望み、その中で自分のルールに基づいて行動することで安心感を得ようとします。さらに、他者からの称賛や褒め言葉には特に敏感で、それが自己肯定感の向上や積極的な気持ちにつながることもしばしばです。

 

一般的に、人は他者の顔立ちや姿勢を観察することで、その人の性格や背景を予測しようとする傾向があります。特に自己愛パーソナリティ障害のような特定の障害を持つ人々は、その障害に伴う特徴的な行動や顔つきを持つことが考えられます。しかし、人としてのコミュニケーションの中での視線の動きや表情、姿勢、発声の仕方、呼吸や心拍のリズム、感情のコントロールや覚醒度などの情報処理の様子は、その人の性格や内面を理解する上での重要な手がかりとなります。だからといって、外見や表面的な特徴だけでその人の性格や障害の有無を断定するのは極めて危険であり、そうした先入観に基づく評価は、時に人権侵害となる恐れもあります。専門家として、私たちが常に心がけるべきなのは、一人一人の人間性を尊重しながら、総合的な観察と理解を深めることです。

 第2節.

自己愛が爬虫類のような顔つきになる原因


自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の背後にある心理的メカニズムや、それがどのようにして特定の顔つきや表情に繋がるのかについて、詳しく解説いたします。

 

自己愛性パーソナリティ障害の成立の背景には、発達の初期段階や小児期における外傷的な体験、通常「トラウマ」と呼ばれるものが深く関与していると広く認識されています。このトラウマは、児童が感じる安全感や安定感を揺るがす出来事であり、それが結果として自己の価値や他者との関係性の認識に影響を及ぼす可能性があります。

 

このような背景から成立するNPDの特徴としては、強い自己中心性や他者の感情を顧みない態度が挙げられますが、それは実際には深い自己不安や価値観の不安定性を隠蔽する防御機制の一部とも考えられます。

トラウマの影響により、得たいの知れない不可解な力が働く


人間の脳は、胎児期から児童期にかけて、段階的に発達していきます。この過程で、生存本能を司る脳幹(しばしば「爬虫類脳」とも呼ばれる部分)や感情を中心とした大脳辺縁系(旧ほ乳類の脳に相当)が進化・発展してきました。この成長と発展は、人間が安全かつ効果的に環境に適応するための基盤を形成します。

 

しかし、この重要な成長期に、虐待やDV(家庭内暴力)、ネグレクト(育児放棄)、母性の欠如、重大な事故や事件、自然災害の経験、手術や出生時の医療的介入に伴うトラウマ、さらにはアトピーや喘息、高熱など身体的な弱さ、母胎内でのトラウマなど、さまざまな外部からの強いストレスや衝撃を受けると、それは人間の情動脳に深く影響を及ぼします。特に脳幹や大脳辺縁系が、このような外部の刺激に対して過剰に反応し、通常の成長パターンから逸脱した防衛反応を発展させることが考えられます。この結果、脳や神経系全体の発達が不完全なものとなり、その後の人生においても影響を受けることになります。

 

トラウマを身体内部に抱え込むと、その影響は日常生活のさまざまな場面で顕著に現れることがあります。例えば、長時間同じ姿勢で静止する必要がある場面や、何らかの形で身体が拘束されるような状況、あるいは寝ている時などでも、不可解なソワソワ感やモヤモヤ感、ザワザワ感を感じることがあります。これは、過剰な警戒や過覚醒、凍結反応や解離状態といった、トラウマ後の神経反応が背後にあると考えられます。そのような瞬間に、交感神経が急激に活性化し、身体には違和感や焦燥感が湧き上がり、心臓の鼓動が速くなるなどの症状が出現します。このような状態では、その場に静かに留まることが困難になり、脅威から逃れるためや問題を解決するための行動を取ろうとする衝動が湧き上がることがあります。

 

学校の授業中や厳格な家庭環境での制約など、身動きが制限される状況は、多くの人々にとって非常にストレスフルです。特に、このような状況下での長時間の不自由さは、心理的な圧迫感を生むことがあります。思考がまとまりにくくなる、閉塞感や恐怖を強く感じるといった症状が現れることも少なくありません。特に、トラウマを背負っている人にとっては、これらの症状はさらに深刻化します。喉がつまるような感覚、呼吸が困難になる、身体の震え、顔色の悪化、動けなくなる感覚、心臓の違和感といった具体的な身体的症状が出現することも考えられます。

 

このような感覚の中心にあるのは、自己のアイデンティティや存在そのものが崩壊する、あるいは消失するという深い恐怖です。人は、このような恐怖や不安から逃れるため、無意識のうちにさまざまな防御機制を働かせることがあります。例えば、自分を守るために優越的なポジションを確保したいという欲求が強くなったり、他者を支配しようとしたりすることが考えられます。これは、環境や他者に対して自らが有利な立場を築くことで、内的な脅威からの保護を図る試みとも解釈できます。

 

しかし、こうした動機が病的に強まると、人は自分の目的を達成するためなら手段を選ばなくなる可能性があります。理想化された存在や目標との同一化を追求し、それを得るためには嘘をついたり、人々を操ったり、自己中心的な行動を取ることを厭わなくなることも。このような行動パターンは、周囲の人々に対して非常に有害で、破壊的な影響を及ぼす可能性が高まります。

身体の中の細胞レベルで強さを見せつけようとする


発達の早期段階でトラウマを経験した人々は、その戦慄の衝撃からの深い苦痛により、身体的な感覚が鈍化し、自らが人間であるという基本的な体験が希薄になります。このような自己感覚の麻痺は、人としての基本的な満足感を得る能力を低下させ、結果として外部の対象に依存する傾向が病的に高まることがあります。自己の確固たる存在感が薄れると、自分と他者の境界があいまいになり、他者の感情や周囲の環境の変化に非常に影響を受けやすくなるのです。

 

このような状態にある方々は、自己の存在を喪失する恐れ、すなわち破局的な不安感を常に持っています。この恐れを緩和するための防衛策として、対人関係の場面では自らの存在を強調し、他者をうまく操って自分を確立しようとする傾向があります。彼らは、他者に認められることに非常に敏感であり、自らの目的のためには相手を利用することもいといません。さらに、日常生活の表面では一見正常に振る舞っているかのように見えますが、微細なストレス要因であっても、彼らの脳の扁桃体はそれを大きな脅威として感じ取ります。この扁桃体の反応により、迫る危機感を動物のような直感で察知する能力が高まります。この危機感が高まると、ストレスホルモンが副腎から大量に分泌され、体の各部位が「自らを守るための力を発揮せよ」という指令を受け取ります。このような反応は、彼らが日常の中で感じる不安や緊張を理解するための鍵となる要素です。

 

ストレスホルモンが持続的に高濃度で存在すると、体は自己防衛のメカニズムに入ります。この状態では、体の筋肉が緊張し、特に目、顔、首、肩、腕、足などの部位は常に警戒の姿勢をとるようになります。これは、所謂「闘争・逃走反応」の体制を取るための前段階であり、私たちが危険を感じるときに自動的に取る生物学的な対応です。

 

脳の中で、私たちの生存に直結した領域、特に扁桃体などのサバイバル関連の領域が活性化します。この結果、気配や物音、他者の視線や特定の臭いに対する感受性が高まります。そして、瞬時に目の前の事物や状況を「友か敵か」「安全か危険か」といった二元的な評価を行います。この評価は、人が行動に移す前の極めて初歩的で本能的な思考プロセスです。

 

さらに、このような状態の人は、自らの気分や心地良さを追求する傾向が強まります。好奇心を刺激するものや興味を引くものには積極的に関わり、逆に不快に感じるものや予測できない不確定な要素からは避けるようになります。また、環境をコントロールしようとの欲求も高まり、他者に好意的に見られるための努力をし、できる限り安定した、自分の思い通りに事が進む環境を整えることにエネルギーを注ぎます。これは、不安やストレスから自分を守るための心理的な防衛策と言えるでしょう。

闘争本能や警戒心が強く、顔つきまで爬虫類に


自己愛の病理を持つ人々は、過去のトラウマや神経発達の問題から、一般的な人々と比較して、危険を感じた際の反応が非常に強烈になります。そのため、彼らの注意は常に特定の方向に集中しており、強烈な情緒の波、すなわち過度の覚醒と低い覚醒の間を繁快に移動しています。このような感覚過負荷、視野の狭まり、注意の散漫、集中の難しさ、過度の集中などの状態は、彼らが自分の心理的状態を適切に理解したり、多角的な視点から物事を考える能力を損なう要因となっています。

 

彼らが自分を脅かすと感じるものや状況に直面すると、身体の筋肉は緊張し硬直し、興奮や怒りが湧き上がります。これが原因で、彼らは短気になりやすく、感情のコントロールが難しくなります。さらに、彼らの意識は外部に向き、特定の刺激に対する感度が増加します。視覚、聴覚、嗅覚などの知覚が過敏になることで、彼らは疲労を早く感じる傾向があります。脅威を感知すると、脳は即座に闘争・逃走モードに移行します。このため、前頭葉、特に感情調整や他者の感情の理解に関わる領域の機能が低下し、自分自身や他者の感情や状態を的確に読み取るのが難しくなります。

 

更に、敵意を感じる存在を目の前にすると、彼らはすぐに闘争や逃走の反応を示す傾向が強まります。一方、彼らが興味を持つ刺激に触れると、エネルギーがみなぎり、何でも挑戦できるという楽観的な感覚に陥りがちです。この際、自身の能力の限界を過小評価することが多く、テンションが極端に高まることも珍しくありません。

 

自己愛の強い親の下で成長する子どもたちは、親からの独特な価値観(「プライドを持って生きること」、「常に強くあること」、「常にトップを目指すこと」)に影響され、その教えを心に深く刻み込まれます。これが原因となり、子どもの自己中心性が増幅し、行動は極端な方向に向かうことが多くなります。長期的にこのような環境での成長を続けると、彼らの認識や信念は固定化し、性格に偏りが生じ、行動のパターンも次第に変わっていきます。特に、状況や問題に対して冷静かつ理性的に判断する能力が低下し、これが後の人生に多くの困難や挫折をもたらす可能性が高まります。

 

要約すると、病的な自己愛の特徴を持つ人々は、生物学的な視点から言えば、我々の進化の過程において生存戦略として有効だった太古の防衛反応に深く囚われています。このような人々は、他者の感情やニーズを適切に読み取ることが難しく、無意識のうちに警戒心を強め、緊張状態になることが多いです。そして、これは彼らの表情や態度にも表れ、一部の人々は、爬虫類のような冷徹さや遠慮のない特徴を持つことがあるかもしれません。

神経の働きから目つきは変わる、早い段階から脅かされると


赤ん坊は、自分と調和している大人が近くにいると、その安定した存在を通して安心感を得られます。その結果、身体の緊張が和らぎ、愛着関係や社会的交流を促進する神経システムが活発になります。これにより、赤ん坊の話し方がより穏やかになり、表情も柔らかく、目の輝きも明るくなります。一方、赤ん坊が持続的な脅威や不安を感じる環境に置かれると、その緊張や警戒が交感神経系を刺激し、子どもは常に興奮した状態となり、その結果、獲物を追う捕食者のような鋭い目つきに変わることがあります。

 

成長過程で複雑なトラウマを経験する子どもは、脳や神経システムがその困難な環境に適応するように発達します。具体的には、捕食者として闘争して勝つための能力と、逃げるか凍りつくことで生き延びる能力、双方がバランスよく形成されます。つまり、幼少期に不安定な環境に置かれると、子どもの神経システムはその環境で生き延びるための最良の方法を選択し、それに適応する形で成長します。

 

そして、これらの適応能力は、大人になってからも人格や行動に影響を及ぼすことが考えられます。たとえば、攻撃的で支配的な性格を持つ人は、自己愛性パーソナリティ障害の特徴を示すことがあります。市場主義の社会において、彼らは劣等感を糧にして競争を勝ち抜こうと努力し、その結果、社会的な成功を収めることが多いです。一方、受け身で防御的な性格を持つ人は、虐待やいじめの経験が原因となり、解離性障害やうつ病、回避性パーソナリティ障害、発達障害などの疾患にかかりやすいです。また、自己愛過敏型の人は解離傾向があるため、捕食されるリスクが高まることも考えられますが、場合によっては攻撃的な行動をとることもあるでしょう。

自己愛性パーソナリティ障害の情動と理性の動き


複合的なトラウマを経験すると、人の思考や行動に大きな影響を及ぼすことが知られています。通常、私たちの行動や判断は、理性を持つ前頭葉という部分の脳で制御されることが多いのですが、トラウマの影響で、この理性脳の働きが低下し、情動脳や、さらに古い進化の段階を示す爬虫類脳がより活発になることがあります。

 

このような状態となると、人は目の前の快楽へと即座に反応し、同時に不快なものや状況を敏感に感じ取り、避けようとする傾向が強まります。この「不快なもの」には、人間関係のトラブルだけでなく、感染のリスクを持つ菌やウィルス、呼吸を困難にするほこりや汚染された空気、怪我の原因となる尖ったものや狭い空間、そして刺激的な音、匂い、光など、多岐にわたる要因が含まれる可能性があります。

 

また、このような状態の人は、日常の出来事に対しても「敵か味方か」という基本的な判断を優先することが多くなります。このような判断基準は、安全であるか、利益を得られるか、苦労を避けられるかといった、直感や本能に基づくものが中心となります。この結果、人間関係においても、損得を重視した考え方が優先されるようになります。利己的な行動や、他者を道具のように利用する姿勢が見られることも。しかし、このような行動をとる本人は、その行動が問題であると自覚することは少なく、自分の行動や判断は合理的であると信じ込んでいることが多いのです。

 

人間の脳は、危険を感じ取ると即座に反応します。この感じ取る能力は、私たちの生存を助けるための原始的な機能として備わっています。危険を察知すると、自動的に身体が緊張し、警戒モードが高まります。この状態では、外部からの情報に敏感になり、自身の身体の感覚や内面的な感情からは距離を置く傾向が強まることがあります。こうした状態が続くと、一貫した自己の意識が欠けてしまい、瞬間瞬間の反応を優先する行動パターンが形成されることが多くなります。結果として、過去を振り返ると自分の中に一貫性や実体感が感じられず、自己存在感が薄れてしまいます。このような不全感や自己の希薄さを隠すために、外見や行動を通じて良い印象を与えようとする努力を始めることが一般的です。

 

また、これらの人々は、他者による拒絶や、公然との恥を避けるために非常に繊細であり、そのような状況において自分の感情や行動をコントロールできなくなることを大きな恐怖として感じています。他者からの批判や否定に極端に敏感になり、対人関係においても過度に気を使う傾向があります。そのため、攻撃的な側面や否定的な面を他者に見せないようにするための仮面を被ることが一般的で、その結果、謙虚で誠実に見えるような行動や、社会の規範に沿った規則正しい態度を取ることが多くなります。さらに、自分の外見や振る舞いに対する過度な意識が強くなり、他者からの評価や承認を求める行動が目立つようになります。

 

自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々の心の内には、矛盾する二つの側面が存在します。一方で、彼らは社会的な期待や評価を重視し、周囲の環境に適応しようと努力します。この側面では、彼らは極めて思いやりが深く、紳士的で、自然な流れや人々の間の調和を尊重しようとする姿勢を見せることがあります。それに対して、もう一方の側面では、社会的な目を気にするものの、その期待に反発したり、環境への適応を拒絶する傾向があります。この時、彼らは自己中心的な態度や誇大妄想にとらわれることがあるのです。これらの二つの極端な側面の間で、彼らは日常的に行き来することがあります。このような矛盾した感情や態度が、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々の複雑な心情を形成していると理解することは、関わる際の理解やサポートにおいて非常に重要です。

まとめ


病的な自己愛の特徴を持つ人々は、視線や顔つきに特徴的な動きを示すことがあり、これは彼らの警戒心や敏感さに起因しています。彼らの反応は、過去のトラウマや神経発達の問題から強烈であり、情緒の波が激しく、環境や人々に対して高い警戒心を持ちます。このような特性は、進化の過程で形成された太古の防衛反応に影響されていると考えられ、特にトラウマやストレスが影響していると思われます。自己愛が強い親の元で育った子どもは、その価値観や行動パターンを継承する傾向があり、これが後の人生に影響を及ぼすことがある。

 

自己愛性パーソナリティ障害を理解し、彼らの背景や環境に起因する行動や反応を認識することが重要です。治療やカウンセリングを通じて、彼ら自身が自分の状態を理解し、感情のコントロールや他者との関係の構築に取り組むことが求められます。また、親や教育者としては、子どもたちに対して多角的な価値観を提供し、情緒の安定や他者との関係性を重視する教育を行うことが重要です。

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2020-06-22

論考 井上陽平

 

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