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カウンセリング効果と内容


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 第1節.

当相談室のカウンセリング


セラピストの役割は、トラウマそのものを治すことではなく、クライエントを共感し、助言を与え、ヒントを提供し、ガイド役やアシスタントとしてサポートすることです。トラウマからの回復を成し遂げるのはクライエント自身であり、その過程は本人の努力と意志にかかっています。

 

トラウマ治療には、頭で自分の状態に気づく「トップダウン」のアプローチと、体験を通じて自己を変容させる「ボトムアップ」のアプローチの両方が不可欠です。セラピストとのセッションを通じて、クライエントはこれらのアプローチを学びますが、それだけでなく、日常生活の中で自己調整スキルを磨き、自分自身で努力を重ねることも重要です。

 

努力を重ねることで、自分自身の成長を振り返り、「自分ならできる」という自信がついてきます。その結果、ありのままの自分を肯定できるようになり、過去のトラウマや嫌な記憶が思い出されても、それに対して過度に反応することなく、心の平安を保てるようになります。また、自信を持って未来を見据えることで、他者との関係にも適切な配慮をしつつ、堂々と人生を歩んでいく力が養われます。

 

最終的に、クライエントは自分の内面を深く理解し、自己肯定感を持って前向きに生きる力を得ることができるでしょう。これは、トラウマを乗り越えるだけでなく、人生全体をより豊かに生きるための基盤となります。

 第2節.

トラウマアプローチの10項目


①セラピストは、クライエントが良い体験を得られるように配慮し、その人にとって最も役立つ方法を常に考えています。具体的には、クライエントが安心して話せる環境を整え、心地よい対話を通じて幸福感を感じてもらうことに重点を置いています。セラピストの役割は、クライエントが自身の力を引き出せるように環境を整え、その過程をサポートすることです。クライエントが自分自身と向き合い、対話を通じて成長や癒しを実感できるように、セラピストは共感的な姿勢で接し、心の安全な場を提供します。

 

②セラピストがあなたの被害感情、つまり耐えがたい心の痛みや不安を共に共有することで、これまで無視されてきたあなた自身の人生から解放され、より自由に生きられるようにサポートします。セラピストとの共感的な対話を通じて、これまで抱えてきた苦しみが認められ、あなた自身の価値や人生に対する新たな視点を持つことができるようになります。このプロセスを通じて、過去の痛みから解放され、自己を肯定し、未来に向かって力強く歩んでいけるよう支援します。

 

東洋の瞑想として知られるマインドフルネス、ソマティックエクスペリエンス、呼吸法、自律訓練法、漸進的筋弛緩法、タッピング、イメージ療法に取り組むことで、身体の生理的な反応の変化を観察します。内なる感覚の変化に注意を集中することで、外界への意識が徐々に弱まり、変性意識状態へと入りやすくなります。この変性意識状態に身を委ねながら、次に起こることを見守り、やがて西洋の瞑想と呼ばれる自由連想法やアクティブイマジネーションへと進みます。

 

この過程では、目を閉じて身体に注意を向け、心に浮かび上がるイメージや空想に没入し、思いついたことを自由に話すことで、精神性と身体性が高まり、心の平穏が得られます。これにより、クライエントは自己と深く向き合い、心と体が調和する感覚を体験しながら、内面的な癒しと成長を促進することができます。

 

身体的アプローチでは、まず自分の体がどの程度意識に上がっているかを確認し、各部位を丁寧に観察していきます。例えば、緊張している肩がどのように動きたがっているのかを感じ取り、実際にその動きを試してみることで、心と体を一致させ、緊張をほぐしていきます。また、口をパクパク動かしたり、眼球を左右上下に動かして景色を見たりして、顔や顎の筋肉の緊張を緩めることも行います。

 

次に、手で物を掴んだり、手足を軽くバタバタと動かすことで、手足の感覚を取り戻し、身体とのつながりを深めます。体の中に緊張や痛み、冷え、麻痺している部分が見つかった場合は、両手でその部分を優しくマッサージしたり、触れたり、叩いたりするタッピングを行います。また、ヒーリング音楽を聴いたり、頭の中で心地よいイメージを思い浮かべることで、身体感覚の変化を観察し、深いリラクゼーションを促進します。

 

さらに、緊張している部位をリズミカルに動かし、体の中に感じる痛みや不快感、震え、揺れなどの感覚に注意を向け、それらがどのように変化していくかを見守ります。この過程で、体内に様々な生理的変化が起こり、その影響が全身に波及します。身体の内側から生じる震えや熱を活用して、緊張を徐々に解きほぐし、体全体がリラックスしていきます。

 

最終的には、希望を捨てた絶望的な状態に自らを追い込み、そこから抜け出すかどうかという極限の選択に直面しますが、その状態をじっくりと味わい尽くすことで、自然治癒力が引き出され、身体に閉じ込められていたトラウマが解放されます。その結果、トラウマによって乱れていた自律神経系や内分泌系のバランスが改善され、全身が軽くなり、深い呼吸ができるようになります。これにより、その夜は安心して眠れるようになるでしょう。

 

このようなセッションを継続していくことで、心身の健康状態が段階的に改善され、様々な症状を緩和できる可能性があります。継続的な取り組みにより、健康の回復と共に、より豊かな人生を送るための基盤が築かれていきます。

 

⑤ナラティブアプローチの外在化技法を用いて、情動的な人格部分や外の気配、影、内なる他者の声に、精霊の名前をつけることで、あなたの問題をより分かりやすく、具体的にします。このプロセスでは、その部分を単に切り離すのではなく、理解を深めていくことが重要です。内なる自分や内なる子ども、内なる他者、そして自然に宿る精霊たちと向き合い、彼らに守ってもらったり、逆に助けてあげたりすることで、深いコミュニケーションを築いていきます。こうした対話を通じて、自分自身の内面に存在する多様な側面を認識し、これまで抱えてきた問題や葛藤に対する新たな視点を得ることができるでしょう。このアプローチは、自己理解を深め、心のバランスを取り戻すための効果的な手段となります。

 

⑥より良い日常生活を送るためには、必要なスキルを獲得することが重要です。また、トラウマが脳や神経系に与える影響、無意識下での過緊張や凍りつき状態、そして身体の生理的な反応を理解することが不可欠です。そこで、これらの理解を深め、自分自身をより効果的にコントロールできるようにするための心理教育を提供します。この教育を通じて、クライエントは自分の反応や感情をよりよく理解し、トラウマの影響を軽減しながら、より健やかで安定した日常を取り戻す力を養います。

 

⑦精神分析療法の一環として、メンタライゼーションなどの技法を用いることで、「今ここ」で起こっている事象に対する気づきを深め、物事をありのままに見る力を養います。このプロセスを通じて、物事に対する見方を多角的に広げ、さまざまな視点から状況を理解できるようになります。さらに、予測が難しい他者の行動や、不確かな人間関係に対しても、冷静に耐え忍ぶ力を育て、円滑に関係を築きながら人生を歩んでいけるようサポートします。このようにして、クライエントはより柔軟で安定した対人スキルを身につけ、複雑な人間関係の中でも自信を持って対応できるようになるでしょう。

            

⑧カウンセリングルームでは、クライエントの内的現実とセラピストの外的現実が交差する中で、転移感情や思考パターン、価値観、意見、筋肉の緊張、身体感覚、そして心の動きが浮かび上がってきます。クライエントは、自分について語り、自分の内面と向き合い、本音や真の感情を率直に表現します。それらをセラピストが受け止めることで、クライエントは自分への理解を深め、心の落ち着きを取り戻していきます。このプロセスを通じて、クライエントは自己理解が進み、心の安定を得るための重要なステップを踏むことができるのです。

 

⑨問題の根源にある不安や恐怖を総合的に振り返り、深く理解することで、症状や悩みを軽減し、人生のさまざまな課題に対処しやすくすることを目指します。このアプローチにより、クライエントは自己理解を深め、根本的な問題に向き合いながら、より効果的に人生を切り拓く力を身につけることができます。

 

⑩必要に応じて、トラウマ記憶に焦点を当てたインナーチャイルドワークやナラティブエクスポージャーを取り入れ、自分自身の人生の物語を新たに書き換えていきます。このプロセスを通じて、過去の傷ついた部分を癒し、これまでの経験に対する新しい視点を得ることで、より豊かで前向きな人生を築く力を育んでいきます。

 第3節.

カウンセリングの期間


早急な解決が難しい場合、一進一退の状況を繰り返しながら、週1回のセッションを通常半年から1年以上かけて行うのが一般的です。特に、ボーダーラインや複雑性トラウマを抱える方の治療には、数年間の継続が必要であり、個人療法と集団療法を併用し、3~7年ほどかかることが多いとされています。そのため、時間と費用がかかることを理解しておくことが重要です。

 

ただし、アメリカ発の最新のトラウマ治療法は著しい進展を遂げており、重度の症状であっても、2~3年程度で寛解に向かう可能性があると言われています。

 第4節.

カウンセリングと日常会話の違い


 

人は、自分にとって居心地の良い人間集団の中で、他者と同調し、見たいものだけを見ようとする傾向があります。そのため、日常生活で意見が対立すると、友人関係を続けることをやめたくなることもあります。しかし、カウンセリングの本質は、日常会話とは異なり、毎週のセッションを通じて、これまで避けてきた自分の見たくない側面や、触れたくない感覚や感情と向き合うことにあります。この過程を通じて、それらに対応できる心の強さを育んでいくのです。

 

そのためには、自分のことを正直に話す覚悟や、自分自身に向き合うためのモチベーションと忍耐力が必要です。たとえカウンセラーとの間で意見が対立し、その場が陰性感情に支配されたとしても、率直に意見を述べ合いながら、関係性を維持し続けることで、新しい人間関係のパターンが形成されます。

 

さらに、誰にも言えなかった秘密をセラピストと共有することで、大きすぎる感情を一人で抱え込まなくても済むようになり、恥の感覚が和らぎます。これにより、クライエントは新たな自分として生まれ変わり、自己をより深く理解し、成長するための基盤を築くことができるのです。

 第5節.

自分の見たくない面とは


トラウマが形成される過程は、不意を突かれた人が、自分を圧倒するような衝撃的な出来事に直面し、身動きが取れなくなる体験に起因します。その瞬間、身体は過剰に反応し、筋肉が硬直し、痛みが鋭く突き刺さり、激しい感情が巻き起こります。トラウマ体験後も、現実の出来事に対する恐怖や戦慄が身体に刻まれ、その影響が心身の症状として現れることがあります。

 

特に、自分の見たくない面が関わるトラウマの場合、見て見ぬふりをすることは自然な防衛反応です。人は、トラウマに関連する不快な感覚や感情を麻痺させながら、日常生活に適応しようとします。しかし、自分の見たくない面を避け続けると、無意識のうちにトラウマの影響を受けた行動を取り続け、価値観や認知が歪んで、心と身体のバランスが崩れて成長していく可能性があります。

 

一方で、自分の見たくない面に触れると、不安や焦り、不快感、緊張感が表れ、その場から逃げ出したくなるかもしれません。また、思いがけない悲しみや怒りが蘇り、その痛みに直面することになるでしょう。しかし、これらの感覚や感情を自分の中に統合し、適切な行動を取ることで、新しい経験へとつながります。

 

例えば、自分の見たくない面に直面することで、子どもの頃の奥深くに眠っていた本音に気づくかもしれません。そして、親を求める気持ちが溢れ、その願いが叶わないことへの恐怖から、それを切り離そうとする心の動きを観察し、未解決の心の痛みを和らげていきます。このようなプロセスを通じて、自分自身をより深く理解し、トラウマからの回復に向けて大きな一歩を踏み出すことができるのです。

 第6節.

カウンセリングでは


人は生きている限り、常に対話を続けているものです。カウンセリングでは、専門的な技術を持つセラピストとの対話を通じて、自分自身の問題や過去について正直に向き合い、思い浮かんだことを自由に話していただきます。カウンセリングルームは、セラピストとの関係性によって、陽性や陰性の転移感情が生じる場でもあります。しかし、その感情の中を共に乗り越えることで、クライエントは古い行動パターンを新しいものへと変化させる力を得るのです。

 

また、対話を通じたカウンセリングにより、自分の気持ちを言葉にし、自身を深く掘り下げることで、自分の人生の物語を新たに書き換えていきます。このプロセスを通じて、クライエントは自己理解を深め、より健全で充実した人生を築くための基盤を整えていくのです。

 第7節.

カウンセリングを続けていくことで


自分の人生の物語を肯定的に書き換え、ポジティブな考えや記憶を積み重ねていくことで、体調は徐々に改善されます。また、現実に耐え難いことが起こったとしても、自分の体の感覚や感情、思考、行動パターンに対する自覚が深まれば、それをありきたりの不幸として受け止め、より生きやすい人生へと変えていくことが可能になります。

 

さらに、本当にやりたいことを見つけるために、瞑想を通じて内なる声に耳を傾け、過去の病的なパターンと決別し、新たな生きる感覚を取り戻していただきます。ちなみに、自分が本当にやりたいことは、過去を深く理解することで明らかになっていくものです。

 

トラウマの克服には、身体と心への気づきと安心感を得ることが重要です。安心できる人に思う存分話を聞いてもらったり、今やりたいことに積極的に取り組むことで、外の世界と繋がり、幸せを感じることができるでしょう。これらのプロセスを通じて、クライエントは過去の傷を癒し、より豊かで充実した人生を歩むための道を見つけることができます。

 第8節.

マインドフルネスと身体的アプローチ


複雑なトラウマを抱えている人は、身体が凍りつき、感覚が麻痺しているため、解離や離人症状、時間感覚の乱れが生じ、まるで過去に取り残されているかのように生きています。過去の出来事に囚われ続け、未来に対して強い不安を抱き、現在起きていることに集中するのが難しくなっています。常に過剰な警戒心を抱き、あらゆる外部の刺激に対してアンテナを張り巡らせているため、心が休まることはありません。その結果、トラウマという内なる爆弾を抱えた状態で、自分自身に注意を向けることが非常に困難になっているのです。

 

当相談室では、イメージワーク、マインドフルネス、タッピング、身体志向アプローチを取り入れたセッションを行っています。初めは、心と身体が一致しておらず、身体感覚が麻痺していることが多いため、全身を大きく動かし、筋肉や内臓、皮膚に振動や刺激を与えることで、身体の内側からじわじわと広がる感覚を引き出します。これにより、感覚の変化を感じ取りながら、ポジティブなイメージに切り替え、身体をほぐし、感覚の麻痺を解いていきます。

 

トラウマ治療でよく用いられるマインドフルネスは、脳の高次機能である意識を活用し、今この瞬間に身体内部で生じている感覚の変化を感じ取り、その部分を活性化させる方法です。タッピングは、身体を優しく叩いたり揉んだりすることで、緊張を解きほぐし、自分自身の身体とのつながりを取り戻します。

 

さらに、身体の緊張している部分に意識を集中し、その緊張を徐々に深めていくイメージを持ってもらいます。そして、全身を縮ませるように追い込み、そのときの肉体感覚をじっくり体験しながら、固まっている部分に意識を向けて緩めるか、その身体の部位がどのように動きたがっているのかを想像し、実際に動かすことで身体に変化を起こします。

 

これらのさまざまな方法を通じて、日常生活で自分の身体の生理状態を良い方向に持っていくことができれば、無意識下にある過緊張や凍りついた状態に変化が生じ、自分自身を取り戻す感覚が芽生えてきます。このプロセスを繰り返すことで、クライエントは自己との深いつながりを取り戻し、より安定した心身の状態を実現できるようになります。

 第9節.

凍りつきと崩れ落ちるトラウマへの対処と効果


トラウマの世界に閉じ込められている人は、過去の外傷体験により、身体が思うように動かせなくなり、凍りついてしまった経験を抱えています。こうした凍りつきの後には、絶望が襲い、心と身体が切り離された無力な状態に陥ることがあります。このとき、背側迷走神経が過剰に働き、心拍や血圧が低下し、筋肉が崩壊し、機能停止や解離、さらには身体が崩れ落ちるような感覚に襲われます。

 

凍りつきや崩れ落ちるトラウマを抱える人は、身体がネガティブな状態に固定されており、脳は絶えず危険信号を発し、脅威を遠ざけようとする防衛反応が働いています。その結果、リラックス(拡張)することができず、緊張(収縮)の力が圧倒的に優勢になります。身体は過緊張や凍りつき、いわゆる「死んだふり」の状態が続き、不安や警戒、焦り、恐怖、痛み、絶望、無力感に支配されているかもしれません。

 

こうした状況にある人は、脳や身体の神経が無意識に危険を察知し続けているため、身体的アプローチを試みても思うように進まないことが多いです。自分の意志に反して防衛反応が過剰に働くため、トラウマへのアプローチには特別な配慮と時間が必要です。この状態を少しずつ解放し、心身のバランスを取り戻すためには、慎重で段階的な治療が求められます。

 

最初の段階では、自分を守るためのポーズを取ったり、危険から逃れた際の安全なイメージを思い出したりすることで、身体の緊張を少しずつ解きほぐしていきます。例えば、赤ん坊を抱くようなイメージで人形を抱きしめることで、身体に安心感を取り戻していきます。安心感が戻ってきたら、次に顔を上げ、目を使って周囲の様子を確認します。これにより、今の自分がどんな気持ちなのかを探りながら、全身を思いっきり動かし、身体の動きや感覚に意識を向けて、覚醒のエネルギーを引き出します。

 

トラウマの深い渦から抜け出すためには、意識的に望みを捨てた絶望状態に入り、自分を極限の不動状態に導くことが必要です。この状態に到達すると、自分を支配する強大な力と正面から向き合うことができます。その瞬間、意識を集中させ、しっかりと向き合うことで、身体に震えや痙攣、鳥肌が現れ、身体内部に閉じ込められていたトラウマが自然に放出されていきます。

 

トラウマから無事に解放されると、筋肉が適度に緩み、神経の痛みが和らぎ、内臓感覚に安心感が戻ります。こうして、人間本来の収縮と拡張のリズムが再び体内で刻まれ、神経システムが平衡状態に戻ります。この状態を維持することで、自然治癒力が高まり、トラウマによって影響を受けた脳の機能までも改善される可能性があります。

 

その効果として、全身に一体感や広がりを感じ、体が温かく軽くなり、動きがスムーズになります。呼吸がしやすくなり、姿勢も改善され、不眠が解消されます。さらに、フラッシュバックが起きにくくなり、過去に引きずり込まれることが減少します。対人関係での緊張も和らぎ、思考がシンプルになり、さまざまな身体症状が軽減されていくでしょう。

 

 

 第10節.

過覚醒に対するワーク


全身を動かしたり、不動状態を出入りしたり、意図的に身体を縮ませてから拡げたり、脱力している部分に負荷をかけて力を取り戻すことで、心と身体の調和が図られていきます。このプロセスにおいて、動きや感覚に注意を向けることが重要であり、その結果、離人症や解離症状が次第に軽減されていきます。しかし同時に、心がこれまで無視してきた現実や、身体の生理的反応にも気づくようになり、それが新たな課題となることもあります。

 

例えば、緊張しやすく、過敏に反応する自分の身体に気づくことで、日常生活の中で物事を適切に処理することが難しくなる場合があります。自分の身体とのつながりを取り戻すことで、ソワソワ、モヤモヤ、ムズムズ、痛み、痒みなどの感覚がより鮮明になり、それが不安や焦りを引き起こし、嫌な気持ちに囚われてしまい、日常生活がスムーズにいかなくなることもあるかもしれません。

 

特に、無力感に打ちのめされた身体を持つ人は、恐怖や不安を我慢して耐えていると、交感神経系が過剰に反応し、口や手足が勝手に動いてしまい、暴言や暴力が出ることがあります。また、誰かを好きになる感情や性欲が戻ってくると、これまで感じていなかった欲求不満が表面化し、日々の生活に影響を及ぼすことも考えられます。

 

このような身体と心の変化は、クライエントが自分自身を深く理解し、新しい感覚や反応に対応していくための重要なステップとなりますが、それに伴う不安や困難にも適切に対処することが必要です。

 

過覚醒を和らげるためのワークでは、さまざまな方法を組み合わせてリラックスを促します。例えば、自分が鳥になって空を飛んだり、好きな海辺で休んだりするイメージ療法、声を出しながら行うヴー呼吸法や、鼻から息を吸ってゆっくりと吐く呼吸法があります。また、シンギングボウルの音を聞く瞑想や、自分の身体に優しく触れるタッピング、足を上げて心拍を下げるポーズ、イライラした時に身体に意識を向けるマインドフルネスも効果的です。

 

特に、楽しく身体を動かしながら、その動きや感覚に注意を払うことで、心地よさを感じることができます。運動後は、全身の力を椅子に預け、力を抜いてリラックスすることが有効です。また、外出時には、周囲を見渡し、自分に「ここは安全だ」と言い聞かせるワークを取り入れると、安心感を高めることができます。

 

日常生活の中で、緊張が強まり、額に力が入り、呼吸が浅く速くなり、瞳孔が開き、顎に力が入って肩が上がり、口が渇いて手足がムズムズするような状態に陥ったときは、心地よいイメージを思い浮かべることで自分を落ち着かせることが有効です。また、足を思いっきり上げて走る運動をすることで心拍数を高め、手足をブラブラさせて血液の循環を促すことで、過覚醒や凍りつき、離人症状を未然に防ぐことができます。

 

一人でこれを実践するのは難しいかもしれませんが、自分の体が不快感や緊張を感じたとき、特定の位置に眼球を動かす癖や、首や肩の硬直に気づくことが大切です。その際、身体が徐々に硬直していく過程に意識を向け、身体の感覚を観察します。その後、身体を動かさずに静止した状態を保ちながら、不快感の変化や全身が凍りついていく様子を見つめます。最終的に、身体が自然に動き始めるのを待つか、耐えきれない場合は心地良いイメージに切り替えて身体を見つめ直すか、全力で身体を動かして弛緩させると良いでしょう。

 

また、自分にトラウマを刻み込んだ最も嫌な相手を思い出し、その怒りを解放するために、相手を打ち倒し、勝利を得るというイメージを伴ったワークも効果的です。こうしたアプローチにより、心と身体のバランスを取り戻し、ストレスや緊張を緩和することができます。

 

トラウマを解決する方法として、身体に閉じ込められたトラウマを解放するエクササイズがあります。まずは、過去のトラウマを思い起こし、身体が固まり凍りつく状態を意図的に作り出します。その後、その最悪な状態にある身体に意識を集中させます。すると、トラウマによって過剰に蓄積されたエネルギーが膨れ上がりますが、適切に向き合うことで、そのエネルギーが自然に放出され、身体の状態が一転します。

 

このプロセスがうまく進むと、オキシトシンが分泌され、急に気分が晴れやかになり、目が大きく開いて、身体の硬直やイライラが解消されていきます。こうしたエクササイズは、トラウマの影響を和らげ、心身のバランスを取り戻すために非常に効果的です。

 第11節.

瞑想していくことにより


東洋と西洋の瞑想を取り入れることで、自分の本音や本当の気持ち、生き生きとした感覚を取り戻すことができます。また、瞑想によって落ち着いた集中状態を学ぶことで、感情や精神の安定が図られ、不安定さを避けることができるようになります。

 

トラウマによって不動状態(凍りつき、死んだふり)に陥っている人が、安心できるイメージや望ましいイメージに切り替えられるようになると、身体は休息やリラックスモードに移行し、全身の緊張が解け、体質が強化されます。さらに、瞑想が深まると、心拍数や呼吸が穏やかになり、身体のエネルギー消費を抑えながら生きることができるようになるため、細胞の新陳代謝が促進され、老化の進行を遅らせることも可能です。

 

また、極限の不動状態に入る瞑想を続けることで、精神性、身体性、心の創造性、審美性、自己管理能力、そしてストレス耐性が高まります。このようにして、日常生活において対人恐怖症や集団場面への苦手意識を持つ人が、身体の凍りつきや過覚醒、複雑な情動、生理的反応にも効果的に対処できるようになります。瞑想の継続は、心身の健康を向上させ、より豊かな人生を築くための強力なツールとなるでしょう。

 第12節.

自己理解、内なる感覚の気づきを深める


セラピストとの対話を通じて、心や精神、身体を内側から丁寧に分析することで、これまで気づかなかった未知の領域に光を当て、自己理解と内なる感覚を深めていきます。自己理解が深まると、問題解決能力が向上し、社会への適応力も高まります。また、内なる感覚が磨かれることで、現実にしっかりと足をつけて生きること(グラウンディング)が可能になります。

 

この過程では、自分を客観的に見る目と、内なる感覚や心の声に気づく耳の両方を養い、本来の自分を生きる力を引き出します。その結果、憂鬱や不安定な感情が和らぎ、目的を達成する力や集中力が高まり、より強い自分として、仕事や勉強に前向きに取り組むことができるようになります。この変化により、クライエントは内面と現実の両方にしっかりと根を下ろし、充実した人生を歩むための力を手に入れることができるのです。

 第13節.

トラウマの変容には


 

トラウマの核心には、生々しい自己保存のエネルギー、たとえば恐怖や激しい怒りといった強烈な情動が渦巻いています。トラウマを変容させるためには、情動的な部分と理性的な部分のバランスを取ることが必要です。情動脳に意識的にアクセスする唯一の方法は、自己認識を通じて行うと言われています。つまり、トラウマの変容には、内部の経験をしっかりと知覚し、自分の内側で起こっていることに向き合い、それと仲良くなりながら、感じ方を少しずつ変えていくことが重要です。

 

最初のステップとして、うずくまる姿勢を取り、安心できる記憶や安全なイメージを思い浮かべます。これにより、身体感覚の不快な感覚が心地よい感覚へと変わっていくのに気づき、その変化を感じることで心の中に新たなイメージが生まれます。そのイメージから物思いにふけり、セラピストに心の内を少しずつ明かしていきます。

 

もし心や身体の中に安全な感覚を発掘できれば、トラウマという地獄の門が開かれます。そして、その最下層にある凍りついた地獄を体験し尽くすことで、凍りつきが解け、両腕や両太もも、そして身体全体に温かい感覚が戻ってきます。魂が再び身体に戻り、身体性と精神性が統合されると、生きている実感がよみがえります。

 

トラウマ支援では、まず低覚醒状態から徐々に回復し、心と身体の一致を目指していきますが、同時に交感神経が過剰に働く過覚醒状態に乗っ取られないよう注意する必要があります。この二つの覚醒度合いをコントロールできるようになることで、穏やかさの中で日常生活を送ることができるよう支援します。これにより、クライエントは内面の平穏を取り戻し、より充実した人生を歩むことができるのです。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平