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解離性症状の自己チェックシートと理解――ストレスとトラウマの影響を探る


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解離性同一性障害や離人症、PTSD、その他の解離性障害が疑われる場合、チェックリストによる自己評価が有効です。このテストは、フランク・W・パトナムの『解離―若年期における病理と治療』(中井久夫 訳 2001年)に掲載されたもので、成人向けに作成されています。DES-IIは公的な文書であり、特別な許可や版権の免除が必要なく、自由に複製、頒布、使用が可能です。自己チェック用の心理検査として、誰でも簡単に利用できるツールとなっています。

 

パトナムは解離を、ストレスやトラウマによって引き起こされる極度の意識状態として定義しています。通常の意識とは異なり、トラウマが強ければ強いほど、解離状態に陥る可能性が高まります。特に慢性的で反復的なトラウマ体験は、時間の経過とともに、個人の意識状態に多様な変容を引き起こします。こうした変容は、心の防衛機制として現れ、現実との繋がりを断つための無意識的な反応として作用するのです。

 

パトナムの理論は、解離性障害の理解を深めるうえで重要な視点を提供しており、自己チェックを通じて自分の意識状態やトラウマの影響を知ることが可能です。解離は単なる一時的な状態ではなく、トラウマが引き起こす深い精神的な反応であり、その治療や理解には時間と適切なアプローチが必要です。

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解離性障害のメカニズム――外傷体験が心と体に及ぼす影響


自分の力ではどうしようもない恐怖を感じ、命の危険に直面する外傷体験をすると、心は痛みから逃れるために身体から離れ、時間感覚や思考、身体、感情面に深刻な影響を及ぼします。解離症状を抱える人は、嫌悪刺激に対して身体が「凍りつく」反応を示しやすくなります。この「凍りつき」の状態では、筋肉が過度に緊張し、神経が圧迫されるため、呼吸困難や激しい動悸、頭痛や胸痛が生じます。最悪の場合、筋肉が極限まで収縮し、身体が崩壊して気を失い、全身の力が抜けてしまうこともあります。

 

1.解離の身体的影響

 

外傷体験により、自分では制御できない身体的反応が起こり、身体の感覚が麻痺していきます。この状態では、時間の感覚が停止し、感情が鈍くなり、集中力が失われ、思考が混乱し始めます。最終的には、自己感覚が失われ、自分が自分でなくなるような感覚に陥ることがあります。これは外傷による解離の典型的な反応であり、心と体が過度のストレスに対処するための無意識的な防衛機制です。

 

2.トラウマがもたらす解離とその影響

 

トラウマが重度になるほど、解離の傾向が強まり、過去と現在の時間感覚が断絶してしまいます。時間が捻じ曲がり、フラッシュバックが頻発するため、過去に囚われたような感覚で生き続け、現在の出来事がかすんでいきます。今この瞬間を生きている感覚が希薄になり、記憶が曖昧になることもしばしばです。

 

解離は、他者の声が自分の頭の中に響き、自分の思考や行動をコントロールされているような感覚を引き起こします。さらには、自分が自分の身体の外から自分自身を眺めているような、離人症と呼ばれる状態に陥り、体が自分のものではないと感じます。

 

3.感情の麻痺と分断

 

情緒の分断も大きな影響を及ぼします。感情が麻痺して、何も感じられなくなったり、逆に感情が過剰に反応してしまい、自分の感情が理解できなくなることもあります。これにより、自分が自分でなくなるような恐怖を抱き、周囲の些細な変化に対しても強い恐怖を感じることがあります。この恐怖がさらなる麻痺や身体の硬直、不動状態を引き起こし、時には原因不明の身体症状やパニック発作をもたらすこともあります。

 

4.解離症状がもたらす日常生活の困難

 

解離症状を抱える人は、活動性が低下し、ぼんやりと時間を過ごすことが多くなります。気がつくと時間だけが過ぎてしまい、やらなければならないことに取り組む意欲が湧かず、先延ばしが常態化します。時間感覚が曖昧になり、思考も働かず、記憶が断片化するため、何をやったかを後から思い出せないことが頻繁に起こります。これにより、生活全般に支障をきたし、日常的なタスクをこなすことが困難になります。

 

5.感覚過敏と対人恐怖の影響

 

さらに、解離症状が悪化すると、身体的な不安や対人恐怖が強まり、感覚過敏が引き起こされます。特に、体内の感覚や周囲の気配に対して敏感になり、不安感や被害妄想が増幅します。この状態が続くと、精神的なエネルギーが枯渇し、無意識のうちに身体が「凍りつく」防衛反応に陥ります。これには、何も感じない、手足に力が入らない、頭が空っぽになるといった症状が含まれます。こうした状態は、心と体を守るための防衛パターンですが、結果的には機能停止に至り、日常生活に大きな影響を与えます。 

 

6.解離性昏迷の特徴と影響

 

解離性昏迷とは、突然エネルギーが切れてしまい、脱力状態に陥る症状です。外から見ると無表情で無反応、まるで気絶しているように見えることが多いです。この状態では、話そうとしても言葉が出ず、相手に自分の意図や気持ちを伝えることができません。こうした多彩な解離症状を持つ人は、生活全般に適応することが難しくなり、無力感から引きこもる傾向が強まります。

 

7.解離症状が引き起こす対人関係の困難

 

解離症状を抱える人は、現実感を失い、外から現実世界を眺めているような感覚に陥ることがあります。このため、自分の「変なところ」を隠そうとする努力が強まり、他人の行動を真似たり、過剰に相手に同調することがしばしば見られます。自分自身の感覚が希薄なため、他者に過剰に合わせ、自分の本心を隠して生きることが習慣化します。

 

8.仮面の裏にある本心の隠蔽

 

こうした人々は、複数の仮面を貼り付け、悩みや苦悩を周囲に見せないようにしています。表面的には問題がないように見えても、内心では大きな苦しみを抱えています。自分を守るための仮面が増えるほど、自分の本心はさらに隠され、他者と本当の関係を築くことが難しくなります。

 

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解離性体験を測るDES改変版テスト――正常な解離から障害レベルまで


解離性体験の評価テスト (DES) について

このテストは、日常生活における解離性体験の度合いを評価するための28項目からなる質問紙です。正常な範囲の解離から、障害となるレベルの解離症状まで幅広くカバーしており、各質問に対して「そういうことはない (0%)」から「いつもそうだ (100%)」までの11段階で答える形式です。各項目のスコアを平均し、その数値によって解離体験を評価します。

 

評価の基準

カットオフは30点とされていますが、以下の4段階で解離傾向を評価します。

  • 15点前後:解離傾向は高くない
  • 25点前後:解離傾向は高めだが、カットオフ以下
  • 35点前後:カットオフを少し超える
  • 50点以上:解離傾向が非常に高い

このテストはスクリーニング用であり、解離性障害の確定診断を行うものではありません。

注目すべき項目

特に、質問③、⑤、⑦、⑧、⑫、⑬、㉒、㉗のスコアが高い場合、解離性障害の可能性が高まるとされています。

DES改変版について

 

本テストは、元々のDES (解離体験スケール) を改変したものであり、質問内容を再編し、より日本語話者にとって理解しやすい形で提供しています。原著のパブリックドメインの性質により、自由に複製・使用可能です。

 

解離性体験のチェック項目

解離性体験には、日常の中でふとした瞬間に現れる症状がいくつかあります。以下は、そのような体験を確認するための質問項目です。これらの質問に当てはまるかどうか、思い返しながらチェックしてみてください。

  1. 記憶の断片化
    車やバス、電車に乗っている時、目的地に着いたものの、どうやってそこまで来たか思い出せないことがありますか?

  2. 話の聞き逃し
    人の話を聞いている途中で、話の一部または全部が頭に入らず、あとから気がつくことがありますか?

  3. 場所の記憶喪失
    自分がある場所にいるのに、そこにどうやってたどり着いたのかわからないことがありますか?

  4. 覚えのない服を着ている
    着た覚えのない服を着ていたことに気づいたことがありますか?

  5. 知らない持ち物
    買った覚えのない物が自分の持ち物に増えていることに気づいたことがありますか?

  6. 見知らぬ人から呼ばれる違う名前
    知らない人から、違う名前で呼ばれたり、前に会ったことがあると言われたことがありますか?

  7. 離人症の感覚
    自分が自分のそばに立っているように感じたり、まるで自分自身を外から見ているような感覚を持つことがありますか?

  8. 知人が誰か分からない
    よく知っているはずの友人や家族が、誰かわからなくなることがありますか?

  9. 大事な出来事の記憶喪失
    人生で重要な出来事(卒業や結婚など)についての記憶が全くないことに気づいたことがありますか?

  10. 言った覚えのないこと
    自分が言った覚えのないことについて、嘘をついたと責められることがありますか?

  11. 鏡の中の自分が分からない
    鏡を見ても、映っている自分が自分だと気づかないことがありますか?

  12. 現実感の喪失
    周囲の人や物が、現実でないように感じられることがありますか?

  13. 身体の自己感覚の喪失
    自分の体が自分のものではない、あるいは自分に属していないように感じることがありますか?

  14. 鮮明な過去の体験
    過去の出来事が非常に鮮明に思い出され、まるでその出来事をもう一度体験しているかのように感じることがありますか?

  15. 夢と現実の区別がつかない
    自分の覚えていることが、実際に起こったことなのか、それともただ夢に見ただけなのか分からないことがありますか?

  16. 見慣れた場所が不自然に感じる
    見慣れた場所にいるのに、まるで知らない場所にいるように感じることがありますか?

  17. テレビや映画への没頭
    テレビや映画を見ていて、周囲で起こっていることに気づかないほど没頭してしまうことがありますか?

  18. 空想に引き込まれる感覚
    空想や白昼夢に引き込まれ、それが現実に起こっているかのように感じることがありますか?

  19. 痛みを無視できる
    自分の痛みを無視できることがありますか?

  20. ぼーっと時間が過ぎる
    じっと座って空を見つめ、何も考えずに時間が経つのに気づかないことがありますか?

  21. ひとりごとの習慣
    一人でいるとき、大きな声で独り言を言っていることがありますか?

  22. まるで2人の別人のような感覚
    自分が全く違うように振る舞い、まるで2人の別人のように感じることがありますか?

  23. 難しいことを簡単に成し遂げる
    ある状況では、普段なら難しいことが驚くほど簡単にできることがありますか?

  24. 何をしたのか覚えていない
    あることを実際にしたのか、それともただ考えただけなのか分からないことがありますか?

  25. 覚えていない行動
    記憶にない行動を自分がしていたと気づいたことがありますか?

  26. 書いた覚えのないメモや文章
    確かに自分が書いたと思われるメモや絵、文章があるのに、それを書いた記憶がないことがありますか?

  27. 声が頭の中で指示する感覚
    頭の中で、何かをするよう促したり、自分の行動に意見を言う声が聞こえることがありますか?

  28. 世界が霧の中にあるように感じる
    まるで世界を霧の中から見ているように感じたり、人や物が遠くに見える、またはぼんやりと感じることがありますか?

まとめ

これらの質問に該当する項目が多い場合、解離性体験の傾向が強い可能性があります。解離症状は、日常生活に大きな影響を与えることがあり、適切なサポートを受けることが重要です。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平

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