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発達障害者の身体性と過敏さ・思考の影響


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 第1節.

発達障害の原因


発達障害には多様な症状やケースがあり、一括りに診断するのは難しいですが、その身体的な要因について考察していきます。

 

発達障害を持つ人々には、遺伝的要因と環境的要因が複雑に絡み合っているとされています。特に、発達初期のトラウマや誕生時のストレス、母胎内での経験、胎児期や乳児期における侵襲的な体験が大きく影響していると考えられます。これは、幼少期の虐待や人間関係によるトラウマが主な原因となるのではなく、赤ん坊の時期に母胎内で受けたストレスや化学物質への曝露、父親の年齢の高さ、母親の妊娠中の健康状態、さらには医療場面での侵襲的な処置など、非常に早い段階での経験が発達障害の要因となることが示唆されています。

 

これらの影響により、脳と身体を繋ぐ神経発達や生体機能のリズムに異常が生じ、発達障害が引き起こされることがあるのです。発達障害は単なる後天的な要因だけでなく、非常に初期の段階での複雑な要因が重なり合って形成されるものであり、その理解には幅広い視点が必要です。

 第2節.

神経発達と生体機能の異常


発達障害を持つ人々は、生まれつき神経が非常に繊細で、リラックスしてゆったりと過ごすことが難しい傾向があります。彼らは絶え間ない緊張にさらされ、その結果、神経発達や生体機能のリズムが一般的な人とは異なる形で成長していきます。幼少期から脳と身体の神経系や生体機能に異常が生じており、現実世界のストレスに過剰に反応しやすいため、非常に不快に感じたり、嫌悪感を抱きやすかったりします。

 

こうした状況が続くと、麻痺が身体の規定反応となり、手足をうまく使えなくなり、心と体の成長がアンバランスになってしまいます。その結果、生きづらさが増し、日常生活で些細なことにも生理学的な防衛反応が起こりやすくなります。具体的には、過緊張や過剰警戒、身体の硬直、凍りつき、脱力、過覚醒や低覚醒、離人感、解離、虚脱などの症状が日常的に現れることがあります。

 

さらに、学童期以降、学校の規則に縛られることで、自分を抑え込むようになり、心が疲弊してしまいます。その結果、過去の情景を思い出せず、考えようとしてもしんどくなり、心が空虚な状態に陥ることがあります。学校での集団生活においても、様々な困難に直面することで、憤激や無力感、さらには虚脱状態に至ることもあります。

 

こうした状況から、社会で生きることが難しくなり、引きこもることで自分の内面的な世界に没頭するようになります。その結果、精神的な面での充実を図ろうとすることが多く見られますが、それが現実の社会生活からさらに遠ざかる要因となることもあります。発達障害を持つ人々にとって、社会の中で生きていくことは多くの課題を伴いますが、その理解と支援が重要です。

 

神経発達の問題を抱える人々は、外に出て活発に行動すると、交感神経が優位になり過覚醒状態に入ることで、身体が軽く感じられ、元気が出ます。しかし、一方で恐怖や脅威を感じると、背側迷走神経が優位になり低覚醒状態に陥り、まるで「死んだふり」をしているかのような状態に陥ります。このとき、腹痛が起こり、希死念慮が高まり、自己否定や自責の念に囚われやすくなります。

 

さらに、凍りつきや虚脱状態で長期間生活していると、神経の働きや生体機能が突然乱れることがあり、血圧や心拍数、内分泌系、睡眠パターン、体温などの生理的反応が急激に変動します。このような変動は体に大きな負担をかけるため、一度体調を崩すと、喘息や気管支炎、鼻炎、高熱、胃腸や皮膚の炎症といった症状が現れ、それらが長期化することもあります。これらの症状は、神経系と生体機能の不調が引き起こすものであり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

 第3節.

発達障害の特徴


発達の早い段階から、自分の身体の内側に不快な感覚を長く抱えてきた結果、身体そのものを感じることを避ける傾向が形成されてきました。このような経験が積み重なることで、自分の体内を感じる力が弱く未熟になり、日常生活で他人と関わる際に、距離感や感覚の違いを敏感に感じ取ることが難しくなるといった特徴が現れます。

 

さらに、発達障害を持つ人々は、心と身体の機能が一貫して連携しないため、感覚がばらばらに機能してしまうことがあります。五感や平衡感覚、内臓や皮膚の感覚などがそれぞれ独立して働き、どの感覚を優先するべきかを判断することが難しくなる場合があります。このため、情報の取り入れ方や感じ方が一般的な人とは異なることが多く、日常生活でのコミュニケーションや他人との関わり方に独特の課題が生じることがあります。

 

日常生活において、発達障害の人々は、運動、睡眠、心拍、体温などの基本的な身体機能のリズムが乱れがちです。このため、覚醒状態が通常の人とは異なり、常に低い覚醒状態で過ごしている人や、運動後のような過覚醒状態が長く続く人もいます。これにより、自分の覚醒レベルを調整することが難しく、睡眠不足や昼夜逆転などの生活リズムの乱れが生じやすくなります。結果として、日中に突然強い眠気に襲われたり、夜間に十分に眠れなかったりすることが多くなります。

 

発達障害を持つ人々は、生活全般で強いストレスと緊張を感じやすく、そのために危険を察知して生き延びようとする防衛反応が過剰に働きます。長期間にわたってこのような過剰防衛が続くと、血流が悪くなり、酸素不足によって筋肉がうまく機能せず、原因不明の身体症状が現れることがあります。これにより、疲労感、倦怠感、身体の重さ、そして強い眠気に悩まされることが多くなります。

 

また、身体が常に限界に近い状態であるため、脳は内臓や筋肉から送られる異常な信号を受け取ることになり、その不快な感覚を遮断しようとする過程で、集中力の低下や注意力の散漫さが生じやすくなります。結果として、生活の質が低下し、日常生活におけるさまざまな活動に支障をきたすことが少なくありません。

 第4節.

身体感覚の異常と過敏性


発達障害を持つ人々は、外部からの刺激に対して非常に過敏である一方、自身の身体感覚をうまく認識できず、ボディイメージが薄くなりがちです。これにより、主体性に欠け、内面的に空虚な感覚を抱くことが多くなります。身体の内部には、渦巻くような感情や感覚が存在しているにもかかわらず、幼い頃からそれらを感じないようにしてきた結果、体内の感覚には鈍感になっています。

 

しかし、同時に外部からの刺激には過度に敏感で、周囲の物音や光、人の気配などに対して異常なほど恐怖を感じ、その恐怖が身体に反応を引き起こします。この過敏な反応を自分自身で制御しようとするあまり、身体の感覚を麻痺させたり、心をシャットダウンしてしまうことがよくあります。これにより、外部の世界とのつながりを断ち、内面に閉じこもる傾向が強まるため、ますます主体性を失ってしまうことになります。

 

自分の身体の感覚に鈍感なため、発達障害の人々は体調不良や疲労、ストレスに気づかないことが多く、無理を重ねた結果、ますます自分の身体を感じられなくなってしまいます。この悪循環が続くと、最終的には身体が限界に達し、さまざまな病気を発症する可能性が高まります。そして、身体的にも精神的にも疲弊し、人との関わりを避けるようになってしまいます。

 

彼らには視覚過敏の特徴が見られ、あらゆるものを過剰に見つめ、興味を引かれたものにはすぐに飛びつく一方、苦手なものには石のように固まって凝視するか、見ないように避ける傾向があります。重度の場合、危険を感じると無意識に首が動いて目がギョロギョロと動き、首振りチックが現れることもあります。周囲の状況に過剰に集中し、必要以上に情報を拾おうとするあまり、頭の中は現在の思考よりも、過去の嫌な記憶や恐ろしいイメージに支配されてしまいます。これにより、過去の後悔や将来への不安に囚われ、物事を否定的に捉え、悲観的な将来像を想像してしまい、現実の生活にある小さな幸せに気づくことができなくなります。

 

さらに、聴覚過敏も見られ、家の中での生活音や子供の泣き声、カラスの鳴き声、隣人の立てる物音に対して強い恐怖を感じ、自分が出す音が周囲に漏れていないかといったことにも過敏になります。このため、家が密集している都市部の生活は彼らにとって大きな脅威となり、電車や街中での人の声や話し声が非常に気になり、集団の中での活動を恐れるようになります。

 第5節.

頭の中の生活とルーティン化した日常


発達障害を持つ人々は、日常生活が困難になるほどの感覚過敏を抱えています。彼らは物音や光、匂い、人の気配などに過敏であり、これらの刺激に一日の大部分を取られてしまいます。神経発達や生体機能に問題があるため、さまざまな生理的反応や身体症状が混乱を引き起こし、結果として自分の身体から意識を遠ざけ、頭の中で生活するようになりがちです。彼らは過去の出来事を振り返り、常に何かに対処する方法を考え続けることで、物事を分析し、アルゴリズム的な思考に陥ることが多いのです。

 

こうした思考パターンは、少しでも不安を感じると身体的な症状が現れるため、脅威を排除しようと物事の因果関係を明確にしようとする防衛反応です。しかし、脅威そのものが曖昧で理解できない場合、答えの出ない問題を一日中考え続けることになります。このような思考習慣が幼少期から続くと、認知が歪み、被害妄想や作話が生じることがあり、特定のこだわりを強めることで自身の安全を保とうとします。

 

その結果、外の世界を脅威だと感じることが多くなり、強い刺激を避けるために生活の中で細かいルールを設け、日常生活をルーティン化していく傾向があります。これにより、彼らは予測可能な範囲での安全を確保しようと努めるのです。

 

発達障害を持つ人々は、頭の中で生活することが基本になりがちです。そのため、身体感覚を十分に把握できず、一般的な感覚が理解しにくく、独特な感性を持つことがあります。内臓や皮膚、筋肉の感覚は鈍い一方で、視覚や聴覚は過敏になりやすく、近隣住民とのトラブルを引き起こすこともあります。しかし、視覚や聴覚の過敏さを活かし、自分の好きな音楽や絵、研究に取り組むことで、才能を発揮する人もいます。

 

発達障害の人々は、一般的な感覚が分からないことから、他者に誤解され、責められることが多くなる傾向があります。しかし、彼らは外部の基準に合わせ、他人の行動を見習ったり、周りの人々の真似をすることで、日常生活を何とか営んでいる人もいます。このように、独自の感性を持ちながらも、社会に適応しようとする努力が日常の中で繰り返されています。

 第6節.

集団場面の不安や他者との関係性


発達障害を持つ人々は、人が多い場所や混雑した場面で意識が混乱しやすく、パニックに陥ったり、感情のコントロールが難しくなることがよくあります。彼らは、最悪の結果に至らないよう細心の注意を払いながら緊張して過ごしていますが、うまくいかないときには、その失敗を何度も思い出しては落ち込んでしまいます。彼らの生活は、常に「失敗しないように」と不安を抱えながら進んでおり、それが身体的な異変を引き起こす恐怖に直結しています。たとえば、憤激して心臓が止まりそうになったり、冷や汗が出たり、血圧が急激に下がったりすることがあります。これにより、心身の状態を自分で管理できなくなる恐怖が、彼らの行動に大きな影響を与えています。

 

このため、発達障害を持つ人々は、同じ時間に同じ場所に行くなど、日常生活をルーティン化して自分をコントロールしようと努めます。こうすることで、少しでも安心感を得ることができるのです。

 

さらに、彼らは強い劣等感を抱いており、そのために他者と関わりたくないように見えがちですが、実際には孤立することを恐れている側面もあります。他人と一緒にいると、何でもないようなことで深く傷つくことがあり、それが周囲に理解されないため、一人を選んでしまうことが多いのです。また、人から嫌われることや、自分の本当の姿が露見することを極度に恐れています。自分の弱みを握られていると感じることが耐えられないほど、神経が繊細であり、そのために身体が動揺しやすくなっています。

 第7節.

発達障害から回復するには


発達障害の方が回復に向かうためには、苦手なことを克服するよりも、得意なことや好きなことを見つけて、その分野に努力を集中させることが最も効果的です。彼らは強制されたり、不快なことに耐えたりするのが苦手なため、自分の強みを活かして、生きる意味や目的を追求する方が、より充実した日常を送ることができます。また、当相談室で実施している瞑想も、身体の中に蓄積されたエネルギーを解放し、身体とのつながりを深める良い方法です。

 

身体や体幹を鍛えるためには、バランスボールを使って全身を揺さぶる、またはトランポリンで飛ぶことで、内臓や筋肉の感覚を掴むことから始めると良いでしょう。さらに、ヨガやストレッチ、運動を通じて呼吸法を学び、筋肉の動きに意識を向けることで、身体との一体感が得られます。加えて、良いイメージと悪いイメージの間を行き来しながら、自身の生理的なメカニズムを理解し、混乱を解いていくことも重要です。身体の感覚をしっかりと掴み、身体との良好な関係を築けるようになると、安心感が生まれ、外の世界に対する見え方や感じ方も変わってくるでしょう。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

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