犯罪を犯す人々の多くは、元々社会の不条理によって傷ついた犠牲者であり、恐ろしい被害体験に巻き込まれています。特に、彼らは命の危機に直面したとき、自分を攻撃してきた人物と同一化する部分を持つことがあります。そのため、日常生活では一見正常に見える振る舞いをしながらも、内面的には安心感が欠如し、自分の体の中に攻撃者と同化した痛みを抱えています。
周囲からの嫌悪刺激を受けると、彼らの中に閉じ込められた攻撃者との同一化が呼び起こされ、内面的な侵食が始まります。こうした感情の嵐が過ぎ去るまで待つしかない状況に置かれることが多いのです。
犯罪を犯す要因には、もともとの気質的要因が大きいとされていますが、早い段階での不条理なトラウマ、つまり逆境体験が非常に大きな影響を与えています。このトラウマによって、彼らの正常な感覚は麻痺し、情動脳や原始的な神経の働きが過剰に活性化されます。その結果、リスクを考慮しない無計画な行動を取りがちであり、快楽を追求する傾向が強まり、追いつめられると自暴自棄な行動に走ることがあります。
幼少期から問題行動を示す子どもたちは、多くの場合、トラウマの影響を受けており、環境からのストレスに非常に敏感です。彼らはストレスや圧力に直面すると、すぐに動揺し、頭が混乱してしまいます。その結果、交感神経系が過剰に活性化され、感情や行動をコントロールすることが難しくなります。このため、意識が飛ぶような感覚で解離して問題行動を起こしたり、居ても立ってもいられない状態で衝動的な行動をとることがあります。
これらの子どもたちは、気質やトラウマによってこのような状態に陥っているにもかかわらず、周囲の人々はその苦しみや困難を理解することができません。そのため、彼らの主張や感情は軽視されがちです。親や教師、クラスメイトからは「問題児」として扱われ、不公平に評価され、強者によって裁かれることが多いのです。
家庭や学校という社会的な場面で精神的に追い詰められるたびに、彼らは反抗するしかありません。この世界が悪意に満ちていると感じると、身動きが取れなくなり、交感神経に支配されて自暴自棄な行動をとることになります。複雑なトラウマが身体に深く刻まれ、周囲の邪魔に対抗しようとする意識が強くなり、さらに「問題児」としてのレッテルを貼られることが多くなります。
その結果、彼らは人間関係をうまく築けず、不当な罰を受け、人間としての尊厳を奪われ、愛されることなく周囲から見放されることになります。このような状況が続くと、彼らは闇の中で生きるようになり、自分自身や命を軽んじるようになりがちです。被害感情や怨念、復讐心が募り、その感情の塊となってしまうのです。
多くの人々は、日常生活において合理的に行動し、法律や社会の倫理を守りながら過ごしています。彼らは自分が加害者になることを避け、社会のルールを尊重して生活しています。しかし、法を犯す人々は、自己制御が難しく、破壊的な行動をとって周囲を混乱させることがよくあります。彼らは、快楽を追求するあまり、社会の倫理や規範を平然と無視し、他人を軽視することがしばしばです。
犯罪を犯す人々は、時に自滅的な行動を繰り返し、普通の人なら考えもしないような犯罪行為に及ぶことがあります。特に性犯罪者の中には、常習的に同じ犯罪を繰り返す人が多く、その行動には合理的な判断力が欠け、欲望を満たすための衝動に駆られています。彼らは、動物的な直感でターゲットを見極め、計画性なく犯罪を実行します。
また、犯罪者は孤独やストレスを蓄積し、精神的に追い込まれると、過去のトラウマによる身体的な状態に戻ってしまうことがあります。こうした状態になると、衝動を抑えきれず、自分よりも弱い相手を狙いがちです。犯罪者にとって、犯罪行為は自身の内的な痛みやストレスの発散手段となり、その結果、社会とのつながりを断ち切り、さらに危険な行動に走ることがあります。
厳しい言い方になりますが、被害者が不幸の連鎖を引き起こす要因の一つには、その態度や振る舞いがあります。被害者はしばしば声が弱々しく、嫌なことに対しては「嫌だ」とはっきり言えず、無力感や自己不信を漂わせることが多いです。このような態度が、加害者を引き寄せ、さらなる被害を招く原因となることがあります。
トラウマに遭った人がその後も繰り返し被害に遭い、不幸のスパイラルに陥る理由の一つは、トラウマ体験が心に深く刻まれ、その経験に囚われることです。トラウマを負った人は、その出来事から前進するのではなく、被害の記憶に捕らわれ、堂々巡りの思考に陥ります。このような状態では、体は恐怖に固定され、思考がグルグルと同じことを繰り返し、姿勢や目線、声、表情に恐怖心が現れます。
過去の被害体験に囚われると、心と体はズタボロになり、恐怖で動けなくなることがあります。フラッシュバックが起こり、過去のトラウマが体に沁みつき、無感覚や無気力な状態から抜け出せないことがあります。実際に脅威に直面したときでも、適切な反応ができず、再び被害に遭いやすくなるのです。このように、過去のトラウマからの解放が難しく、無限に続く被害のスパイラルに巻き込まれることがあるのです。
被害者は、自分を脅かす存在から逃れられない状況に置かれ、強制的に同調を求められることがあります。時には、意識的にその加害者に近づこうとする場合さえあります。多くの被害者は、脅威となる対象を目の前にすると、恐怖で肩が震え、逃げるか、それとも接近するかという二択を迫られるのです。
特に、脅威がいつ自分に向かって攻撃を仕掛けてくるか分からない状況では、常に神経を尖らせ、自分がどのように動くべきかを絶えず考えています。このような状況で、脅威の対象にあえて近づくと、瞬間的に生き延びるための本能が刺激され、切迫感が生きる実感をもたらします。このとき、アドレナリンが急上昇し、気分が高揚し、身体が軽く感じられることもあります。頭の回転が速くなり、動きも敏捷になり、心身が極度に活性化していくのです。
しかし、このように緊張感が高まっているときに、脅威から実際に攻撃を受けると、恐怖が身体を硬直させ、過去の外傷が再び蘇る可能性があります。この場合、被害者は再びトラウマを再演することになり、心身に深刻な影響を及ぼすことがあります。被害者は、このような複雑な状況の中で、常に生き延びるための戦いを強いられているのです。
自分を脅かしてくる人物に対して、客観的に分析しようと近づいてしまうことで、再び被害を受けるリスクが高まることがあります。特に、複雑なトラウマを抱えている人は、危機的な場面で戦うか逃げるかを選ぶ前に、恐怖で体が凍りつき、手足の感覚が麻痺して動けなくなったり、声が出なくなったりします。このため、自己防衛の行動、例えば逃げる、払いのける、叫ぶといった反応ができず、その場で恐怖に縛られてしまうのです。
このような状態では、被害者は加害者の意のままになり、無抵抗で被害を受けることになります。一般的な人であれば、攻撃を受けると抵抗するのが自然な反応ですが、複雑なトラウマを持つ人は、攻撃にさらされても反応が鈍く、動くことができず、結果として加害者の言いなりになってしまいます。そのため、ひどい体験を繰り返し被害者になりやすいのです。
さらに、被害者は自分で自分を守れなかったことを強く責めたり、加害者への恐怖心が消えず、人生を台無しにされたと感じることが多いです。この無力感や悔しさが、さらに心の傷を深め、トラウマを一層強固にしてしまうことがあります。
加害者が犯罪を犯す際には、神経が異常に鋭敏になり、通常以上に周囲の状況や人々の反応に敏感になります。彼らはまるで獲物を狙う捕食者のように、被害者の恐怖や不安を嗅ぎ分け、その感情に引き寄せられるかのようにターゲットを選びます。
特に、被害者が恐怖心や無力感に囚われていると、その雰囲気が加害者を誘引します。加害者は、恐怖に支配され、脅威にさらされたときにすぐにフリーズしてしまうような人、反撃する力が弱く、抵抗するよりも黙っている方が楽だと感じる人を敏感に見抜き、ターゲットとして選びます。こうした被害者の特徴は、加害者にとって「攻撃しやすい相手」として映り、結果として再び被害に遭いやすくなってしまうのです。