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虐待する保護者の特徴と複雑な親子関係のリスク要因


人間は、環境や状況によって誰もが虐待を引き起こす可能性を持っています。特に、子どもが発達初期に不運なトラウマを経験したり、医療に関わるトラウマを受けたりすると、幼児PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、深刻な影響を及ぼすことがあります。幼児PTSDを抱えた子どもは、自己の身体や感情を適切にコントロールできず、脆弱な心を持つようになります。その結果、脳が常に危険や脅威を感じ取り、極端な行動を取ることが増えます。このような状況に直面した養育者が、過度なストレスを感じ、意図せずに虐待に至ることもあります。

 

さらに、発達障害を持つ子どもも、育てる上での困難さが増し、親が苛立ちや疲労から虐待に走るリスクが高まります。子どもの側にトラウマや神経発達の問題があると、彼らの神経は過敏になり、周囲の状況を危険や脅威と過剰に認識してしまうことがあります。このため、親が行う通常の躾や指導が、子どもにとっては極度の恐怖体験として映ることもあります。

 

こうした状況では、子どもは親を「毒親」や「酷い虐待者」として認識し始める可能性が高まります。トラウマや発達障害があるために、神経が他の子どもよりも繊細になり、結果的に過剰な恐怖感や被害感を抱くことがあるのです。このように、子どもの側に存在するトラウマや発達の問題が、虐待リスクを高める要因となることを理解することが重要です。

親の未解決なトラウマが引き起こす虐待の連鎖


一方で、精神的に未熟な親やナルシストで躾に厳しい親、感覚過敏や心身が弱い親、発達障害やうつ病などの精神疾患を持つ親、さらに夫婦関係が不安定で経済的に不安を抱える親など、親自身に問題がある場合、子どもへの虐待が発生するリスクが高まります。親から虐待を受け、自身も未解決なトラウマを抱えたまま育った人は、自分が親になったときに、子どもをありのまま受け入れ、その存在を肯定することが困難になります。こうした親たちは、自分が幼い頃に受けた扱いや経験が原因で、子どもに対する適切な対応が難しくなります。

 

虐待を受けて育った親は、自己の感情や欲求を抑圧された過去を持つため、自分の子どもが自由に振る舞うことを許せず、「泣くな」「我慢しろ」と強要してしまうことがあります。子どもが親の期待通りに育たないと不快感が増し、心の通じ合いが難しくなることで、関係がさらに悪化します。また、子どもが大きな声を出したり、物音を立てたりすることに対して、親は過度にイライラし、発狂しそうになることもあります。こうした状況は、親自身の過去の傷が癒されないまま子育てを続けることによって、親が疲弊し、うつ状態や感情コントロールの喪失を引き起こし、子どもに対して厳しく当たることへとつながります。

 

さらに、親が子どもの教育に過剰に熱心で支配的になったり、躾が行き過ぎたりすることも虐待に発展するリスクがあります。これらの状況では、子ども側の問題と親側の問題が複雑に絡み合い、虐待が生じるケースが多く見られます。親子の関係がこのようにして悪化することを防ぐためには、親自身のトラウマを癒し、適切なサポートとケアを受けることが必要です。

虐待の種類


児童虐待は、法律では、保護者がその監護する児童に対して行うことです。4種の虐待行為を、「児童虐待」と定義しています。①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待に分類されますが、単独で現れることはなく、その2、3種類が同時に混在することがほとんどです。

 

①身体的虐待

児童虐待防止法では、児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えることです。

・外傷の種類はさまざま(切り傷、擦り傷、火傷、内出血…)です。

・外傷は外から見えにくかったり、普通に生活していれば怪我を負いにくい部位に生じていたりすることもあります。

 

②性的虐待

児童虐待防止法では、児童にわいせつな行為をすること又は児童にわいせつな行為をさせることです。

・直接的な性行為だけが性的虐待ではありません。

・知っていながら放置することも虐待(ネグレクトに該当)です。

 

③ネグレクト

児童虐待防止法では、保護者としての監護を著しく怠ることです。児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置。保護者以外の同居人による虐待行為の放置など。

・子どもの年齢や能力、家族の生活形態などによって判断はわかれる。

・学校現場には疑いをもちやすい虐待です。

 

④心理的虐待

児童虐待防止法では、児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うことです。児童に対する著しい暴言又は著しい拒絶的な態度。児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力など。

・ドメスティックバイオレンスを目撃していることは心理的虐待です。

 

虐待とは、家庭内の大人から子どもへの不適切な力の行使です。家庭内の大人とは「親」に限りません。児童相談所での児童虐待相談対応件数は年々増えていっています。

虐待リスクを高める複雑な親子関係の特徴チェック


自分勝手で精神的に未熟な親
精神的に未熟で自己中心的な親は、自身の情緒を安定させるために、子どもに過度な従順さを強要したり、奴隷のように扱ったりします。このような親の行動は、子どもに大きな心身の圧力をかけ、深刻なトラウマを引き起こします。

虐待された親が子どもを虐待するケース
親自身が過去に虐待を受けた経験があると、自分の子どもを愛情を持って育てようとしても、子どもがわがままで不満を口にすると、自分の過去と比較して腹立たしさを感じ、虐待に走ることがあります。

保護者の精神疾患が引き金となる虐待
精神疾患や発達障害を持つ親が、強い抑うつ状態や情緒不安定さに苦しむと、幸せそうにしている子どもに苛立ちを感じ、虐待に至ることがあります。

離婚や一人親家庭における虐待リスク
離婚や一人親家庭などの環境では、養育者が中絶を望んでいた場合や、親のストレスが高まることで、生まれてきた子どもに対して虐待のリスクが高まります。

子どもの発達に関する不安が虐待を誘発
子どもの発達に強い不安や悩みを抱える親は、そのストレスが虐待を引き起こす要因となります。

貧困と生活基盤の脆弱さによるネグレクト
経済的に困窮している親は、生活基盤が不安定なため、子どもの世話が十分にできず、ネグレクトに陥るリスクが高まります。

継父の虐待と母親の無視
継父が虐待を行い、母親がその状況を見て見ぬふりをするケースでは、子どもは二重の虐待を受けることになり、大きな心理的ダメージを受けます。

夫婦間の不和が虐待に繋がる
夫婦間で価値観や生活習慣の違いが大きくなり、夫婦間のバランスが崩れると、家庭内での虐待リスクが高まります。

「パワー」と「コントロール」の病理
力を持つ親が、無力な子どもを支配しようとする病理が、虐待的な関係を生み出すことがあります。これが「パワー」と「コントロール」に基づく虐待の病理です。

PTSD症状を持つ子どもと親の対立
子どもがPTSD症状を持ち、反抗的な態度を示す場合、親は力で子どもを抑え込もうとして虐待的な関係に陥ることがあります。

ナルシシズムと子どもの道具化
ナルシストな親は、子どもを独立した人間として尊重せず、自分の道具やアクセサリーとして扱おうとします。

失敗を許さない親の暴力
何度も同じ失敗を繰り返す子どもに対して、親はしつけを超えて、暴力や暴言を日常的に振るうようになります。

過保護な親の束縛
子どもの安全を過剰に心配する親は、子どもを束縛し、過度に監視することで、子どもの心理的自由を奪うことがあります。

感覚過敏な親のイライラ
音や匂いに対して過敏な親は、子どもが遊んでいるだけでも騒がしく感じ、イライラが募ってしまい、厳しく接することがあります。

夫婦間の不和が引き起こす虐待
夫婦間での激しい言い争いや喧嘩が絶えない状況は、家庭内のストレスを高め、虐待が起こりやすくなります。

心身の疲労からくる厳しい接し方
親が日常生活や子育てで心身ともに疲れ切ってしまうと、イライラが募り、子どもに対して厳しく接することがあります。

過酷な環境で育った親の虐待リスク
過酷な環境で育ち、対処能力が低い親は、感情の浮き沈みが激しくなり、結果的に虐待に走るリスクが高まります。

 

これらの要因は、すべてが単独で起こるわけではなく、複合的に絡み合い、虐待のリスクを高めています。親自身が自分の問題を認識できず、養育における問題点に無自覚であるため、早期の支援と介入が求められます。支援者は、親が変わるためのサポートを提供しつつ、子どもの安全を守るために適切な対応を行うことが重要です。

 

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