境界性パーソナリティ障害を持つ人々は、身体の中に深いトラウマを抱えており、原始的な防衛反応が常に作動しています。そのため、一人で静かにしているだけでも、寂しさや落ち着かなさ、イライラが募り、じっとしていられなくなります。特に、嫌な出来事や予測不能な状況に対しては、神経が過剰に反応し、恐怖や不安が一気に押し寄せます。これにより、胸のざわつきや身体の凍りつくような感覚、悪い記憶の蘇り、さらには体調の悪化が引き起こされます。これらの不快な状態が続くと、交感神経や背側迷走神経が過剰に働き、身体の感覚や感情、思考が混乱し、常に不安定な状態に陥ってしまいます。根底には自己感覚の欠如があり、自分が自分でなくなる恐怖や慢性的な虚無感に苛まれています。
境界性パーソナリティ障害を持つ人々は、対人関係において数々の失敗を経験しており、これ以上の苦痛に耐えられないという強い恐怖を抱えています。人から傷つけられること、あるいは自分が誰かを傷つけてしまうことに対する恐怖心が強く、心身は常に傷つきやすい状態にあります。その結果、他者の態度や視線、言葉に対して過剰に敏感に反応し、相手の態度が突然変わると、心臓が縮みあがり、見えない刃物で刺されるような感覚に襲われます。このような状況では、人との距離感をうまく掴むことができず、被害者意識や人間不信が強まり、相手を敵か味方か、白か黒かで決めつけ、自分の安全を守ろうとします。
彼らは、自分を守るために無意識のうちに相手を傷つけることがあります。心の奥底では誰かに助けを求めていますが、他者の善意を信用できず、それを跳ねのけてしまうのです。また、他者が自分を理解してくれないことにイライラし、衝動的に手を出してしまうこともあります。感情の波が激しく、他者を理想化しては脱価値化することを繰り返し、生活全般が困難になり、現実世界よりも妄想の世界に逃避しがちです。過度な自己肯定や自己否定、孤独感や被害意識が増大し、ますます自分の居場所がなくなります。
身体は嫌悪刺激に対して即座に硬直し、痛みや怠さ、ざわつきを感じ、心の余裕を失ってしまいます。不快感や雑音、不確実な要素に対して耐えられなくなり、常に不安がつきまといます。彼らは、相手に安心感を求めていますが、それが得られないと、相手を許せず、罵りや攻撃に転じます。そして、その行為に後悔し、自分を非難するという悪循環に陥ります。このような関係が続くと、相手からの反撃を受け、心身ともに限界に達してしまいます。
彼らは、過去のトラウマや他者との衝突からくる自責感を抱え、それが再び傷つけられることへの不安を増幅させます。何度も同じパターンを繰り返すことで、自分を恥じ、引きこもりがちになり、最終的には動けなくなって生活全般が苦しくなります。
境界性パーソナリティ障害を持つ人々と関わる人々は、善意や思いやりを持って接していても、しばしば彼らの攻撃性や過敏さに直面し、思わぬ反応を引き出してしまいます。彼らの拒絶的な態度に苛立ち、つい仕返しをしたくなることもあります。しかし、その場で反省して仲直りができたとしても、無意識のうちに不気味な仕返しの応酬が続き、関係はますます悪化していきます。
このような悪循環を断ち切るためには、彼らの深い不安とトラウマを理解し、適切なサポートを提供することが求められます。
境界性パーソナリティ障害を抱える人々は、身体が凍りついたような感覚や、生きているのに死んでいるかのような虚無感に悩まされています。その体内には、情動的な人格部分が潜んでおり、現実でショックな出来事に直面すると、元の自分がシャットダウンし、代わりに暴言や暴力、怠惰、嘘、ごまかしといった問題行動が表れます。これらの行動は、彼らが抱える複雑なトラウマの結果であり、その背後にある深い痛みと苦しみを理解し、適切なケアが必要です。
境界性パーソナリティ障害の回復には、家族や友人、特にパートナーの理解と支えが不可欠です。彼らが落ち着いて過ごせる環境を整え、生活全般のストレスと緊張を和らげることが、回復への第一歩となります。家族や友人との楽しい時間を過ごすことはもちろん、外を散歩したり、読書や音楽、クリエイティブな趣味に打ち込むことも有効です。また、生産的な活動や瞑想、ヨガ、カウンセリング、睡眠をしっかりとること、体に良い食事を摂ること、適度な運動をすることも、身体と心の回復を助けます。さらに、マッサージや鍼灸、ダンス、スピリチュアルな活動や演劇など、心と身体のバランスを整えるための様々なアプローチが効果的です。
毎日、好奇心を持ち続け、自分がやりたいことを自由に楽しむことが大切です。自己肯定感を高め、身体のメンテナンスにも心を配ることで、心の健康が徐々に取り戻されていきます。なるべく本音や感情を素直に表現できる対等な関係を築き、苦手な相手との接触は極力避けましょう。そして、安心できる環境の中で、静かにゆっくりと休息を取ることが大切です。身体が弛緩し、足先まで温まるような幸せな体験を通じて、尖った神経が少しずつ緩まり、安心して眠れるようになります。そうすることで、穏やかな自分を取り戻し、人生に前向きな変化が訪れるでしょう。
人生が前向きになり始めると、身体と心は良い方向に広がり、トラウマは過去のものとなります。新しい道を作り、歩んでいくことが、真の回復に繋がります。トラウマを乗り越え、新たな未来を切り開くことで、自己肯定感がさらに高まり、心身共に健やかな生活が送れるようになります。
1)できることとできないことをはっきりさせる
境界性パーソナリティ障害を抱える人々は、深い人間不信と、他者から傷つけられることへの強い不安を抱えています。彼らは、不確かな状況や、自分でコントロールできない他者との関係に対して極端に敏感で、その結果、感情や思考が暴走しがちです。また、自分の心を安定させるために、無意識のうちに周囲の人々を操作しようとする傾向があります。自分の思い通りに他者が動いてくれることを望み、それが実現しないと、苛立ちや不安が増し、対人関係がさらに複雑になることがあります。
一方で、思いやりのある人や、孤独を感じ愛情に飢えている人々は、境界性パーソナリティ障害を持つ人々に対して、何でもしてあげたいと感じることが多いです。彼らは、相手の不幸な過去や苦しみに共感し、無償の愛を提供しようとします。しかし、このような関係が深まるにつれ、境界性の人々はその愛情に依存し、さらに甘えが強くなります。そして、依存が進むと、期待が満たされない場合に攻撃的な態度を示すことが増え、相手にとって手に負えない状況になることも少なくありません。
境界性パーソナリティ障害の人と健全な関係を築くためには、まず、相手に対してできることとできないことを明確に伝えることが重要です。限界を設けることで、相手にとって安心できる環境を作りつつ、すべてが思い通りにはいかないことを理解してもらうことが必要です。これは、彼らが感情の波に飲み込まれるのを防ぎ、自ら踏ん張る力を育てる手助けとなります。この力が、最終的にはトラウマを乗り越える力へと繋がります。
無償の愛を提供することは素晴らしいことですが、相手がそれに対して利他的でない場合、関わる人は燃え尽きてしまう可能性があります。相手の境界性パーソナリティ障害を理解し、彼らを支えようとすることは重要ですが、同時に、自分自身の限界を守り、無理のない範囲で関係を築くことが大切です。そうすることで、持続可能な関係を保ちながら、相手が自己成長し、トラウマを克服するための道筋を提供することができるでしょう。
2)一緒に喜び、気持ちを理解しようとする
境界性パーソナリティ障害を抱える人は、興味のない相手に対しては冷淡に接することが多いですが、大切な人には全力を尽くそうとします。彼らは、自分の幸せに気づきにくい傾向があるため、大切な人が幸せそうにしている姿を見ることで、自分自身も満たされた気持ちを得ることができます。
一方で、彼らは大切な人に対して「自分のことを理解してほしい」という強い願いを抱いています。しかし、思うように理解してもらえないと深い悲しみを感じ、その悲しみがやがて怒りへと変わることがあります。その結果、対人関係でのトラブルが頻繁に起こることがありますが、こうした状況を乗り越えるためには、互いにできることとできないことを率直に伝え合い、相手の気持ちを理解しようとする努力が不可欠です。
こうした努力を重ねることで、二人の絆は次第に強固なものとなり、長続きする関係を築くことが可能になります。お互いの気持ちを理解し合うことが、境界性パーソナリティ障害を抱える人との関係において非常に重要です。
3)強すぎる見捨てられ不安
境界性パーソナリティ障害を抱える人は、安心して過ごせる場所を見つけるのが難しく、家の中で一人でいる時でさえ、落ち着かないことが多いです。彼らはしばしばフラッシュバックやパニック発作、過呼吸、身体的な不調、そして慢性的な空虚感に悩まされます。恋人に対して理想化した幻想を抱き、過度に期待することもありますが、恋人からの連絡が遅れると、すぐに不安になり、その不安が過去のトラウマと重なってしまいます。「また誰かが自分の元を去ってしまうのではないか」という恐怖が頭をよぎり、将来の否定的な可能性に囚われてしまうのです。
このような状況では、恋人関係に対する不安が募り、相手が自分を安心させてくれないと感じると、その不安がさらに増幅されます。「このままでは関係が壊れてしまうのではないか」という取り返しのつかない恐怖を感じ、どう対処すれば良いのか分からなくなり、じっとしていることができなくなります。そして、その不安が次第に凍りつきやパニック、あるいは相手にしがみつこうとする強迫的な行動や怒りへと変わってしまいます。
不快な状況が長引くと、凍りつきやパニック状態から、さらには気が狂いそうな感覚にまで陥ることがあります。このため、彼らのそばにいる人は、不安を煽るような言動を避け、できるだけ頻繁に連絡を取るよう心掛けることが重要です。さらに、愛情を込めた手紙を渡すことも効果的です。小さな心遣いが、彼らにとって大きな安心感となり、関係を安定させる助けになるでしょう。
4)冗談が通じない
境界性パーソナリティ障害を抱える人々は、身体の中にトラウマという過剰なエネルギーが蓄積されており、その影響で非常に傷つきやすい状態にあります。彼らは身体的な痛みや不快感、怒り、麻痺、そして胸が潰れるような重苦しい感覚を抱えながら生活しています。情緒が不安定で、ちょっとしたことで怒りを感じやすく、自分にも他人にも厳しい一面を持っています。
彼らは心に余裕がないため、相手の言葉の裏に隠された意図を読み取ることが難しく、普通なら受け流せるようなことも繊細に反応してしまいます。そのため、冗談が通じにくく、周囲の人々は言葉を慎重に選ぶ必要があります。彼らは言われたことをそのまま真に受け取る傾向が強いため、言葉の選び方には特に注意が必要です。理解されないことへの恐怖や不安が彼らの心に常に影を落としており、その結果として、周囲の人々にも緊張感が生じることがあります。
5)言葉が凶器になりかねない
境界性パーソナリティ障害を抱える人は、相手にとっては何気ない一言でも、それが鋭い刃物のように心に突き刺さり、胸の痛みや混乱を引き起こします。これにより、フラッシュバックが生じたり、感情のコントロールが効かなくなることがあります。たとえば、普段は自分に優しくしてくれている相手でも、たった一言が気に入らないと、その瞬間にすべてが台無しになり、その人が最低な存在にしか見えなくなります。
彼らは、相手の態度や言葉一つ一つに非常に敏感で、いつ誰かを傷つけるか、自分に跳ね返ってくるかを常に考えています。そのため、相手の言葉遣いの些細な間違いでも許せず、自分が脅かされたと感じた瞬間に胸がざわつき、不快な気持ちに包まれます。こうした状況では、闘争スイッチが入り、攻撃的な言動や投げやりな態度、自暴自棄な行動に繋がりやすくなります。
彼らと関わる人は、非常に気を使って接する必要がありますが、気を使いすぎて肩に力が入り、それが表情に現れてしまうと、逆効果になることもあります。彼らが痛みを感じると、凍りつきやフラッシュバックを引き起こす可能性があるため、相手を不快にさせる言葉は避けるべきです。暖かく、包み込むような言葉を使い、心地よい雰囲気を作ることが大切です。彼らが安心してくつろげるように、優しさと温かさを持って接しましょう。
6)他人との線引きが苦手
境界性パーソナリティ障害を抱える人は、身体内部に恐怖や怒りといった強烈な感情を抑え込んでいるため、他人が自分の心に土足で踏み込んでくるような行動をされたり、許可していないことを勝手にされたり、想定外の出来事が起こると、感情のコントロールが難しくなり、自分自身を保てなくなってしまうことがあります。その結果、感情が爆発し、人間関係において大きなトラブルを引き起こしやすくなります。
このような状態では、他人との適切な距離感を保つことが難しく、特に異性関係で問題が多発することがあります。彼らは、無駄な人間関係が心身に悪影響を与えることを理解しており、そのため、誰とでも友達になろうとする精神は持ち合わせていません。むしろ、必要最小限の関係に絞り、自分を守ることを優先しています。
彼らと接する際には、感情のコントロールが難しくなることや、自分が自分でなくなるという恐怖が常にあることを理解することが重要です。踏み込んでほしくない領域には入らないようにし、彼らが安心して過ごせるような配慮を心がけることが、良好な関係を保つための鍵となります。
7)まずは安全や安心感
境界性パーソナリティ障害を持つ人は、心の中に安定した安心感がなく、常に脅かされることへの強い不安を抱えています。彼らは、他人の表情に敏感に反応し、怒った顔には怯え、笑顔には安堵を感じます。外の世界に対して完璧な安全を求めるため、相手の態度や言葉を見透かし、快か不快かを常に判断しようとします。こうして、完璧な状態を保つことで、自分の安全を保障しようとするのです。
安全で安心できる環境では、誰かに支えられることで、彼らは心地よく過ごすことができます。しかし、過去にさまざまな外傷体験をしてきたことから、心の奥底には他人を信じきれない部分があり、周囲の人々が自分に害を加えるのではないかと疑ってしまうのです。
日常生活の中で追い詰められたり、疲れているときに不快なことがあると、彼らのストレスは瞬時に高まり、交感神経が優位になってしまいます。この状態では、頭が混乱し、相手を責めたり罵ることがあり、その後には感情をコントロールできなかった自分を責め、強い罪悪感に苛まれることが多いです。
そのため、彼らと接する人は、怖がらせないように細心の注意を払いながら、問題を一緒に解決していくことが大切です。そして、何よりも重要なのは、彼らに対して「ずっとそばにいる」という本当の安心感を与え続けることです。彼らを信じ、焦らずに待つことで、徐々に心を開き、安定した関係を築いていけるでしょう。
8)対象に求める質が異常
境界性パーソナリティ障害を持つ人が最も安心するのは、パートナーが自分だけに集中し、頻繁に連絡をくれることで常に安心感を与えてくれる状況です。彼らは、現実的でないことでもパートナーに期待し、自分のために何とかしてほしいと強く願い、その期待はしばしば過剰になります。これにより、パートナーは彼らの要求に応じ続けることになり、次第に疲弊し、関係を維持することが難しくなってしまいます。
このような状況では、双方が不幸になるリスクが高まります。そのため、パートナーは境界性パーソナリティ障害を持つ人の依存心を生産的な活動に向けるようサポートしながら、適度な距離感を保つことが重要です。こうすることで、関係が健全に続く可能性が高まり、双方にとってより良い結果をもたらすでしょう。
9)扁桃体に直接働きかける
境界性パーソナリティ障害を持つ人は、常に過剰な警戒心を抱き、人の目を気にしながら、自分やこの世界を否定的に捉えがちです。彼らの脳の扁桃体は、危険をすぐに察知して反応するため、情動が絶え間なく活性化し、ストレスホルモンが常に体内に送り込まれています。この過敏な扁桃体を鎮めるためには、他者の支援が不可欠です。
まず、親密な人との関係において、彼らが穏やかで楽しい快感を追求できるような場面を作ることが重要です。サポートする人が相手の表情や行動から感情を読み取り、その内的状況に適した言葉や表情を返すことで、彼らの身体に流れるリズムが変化し、新たな流れが生まれます。このプロセスにより、扁桃体の過敏な反応が徐々に和らいでいきます。
このような身体の深部から楽しみを感じるボトムアップ体験を繰り返すことで、トラウマの再体験による過覚醒症状は次第に軽減され、彼らは穏やかな日々を過ごし、十分な睡眠を取れるようになります。
10)激しい怒りから生き残る
境界性パーソナリティ障害を持つ人は、ちょっとした言葉でも自分が脅かされていると感じ、瞬時に体の状態が変わり、相手が敵に見えることがあります。こうした状況では、認知的フラッシュバックや激しい怒り、凍りつきが引き起こされます。認知的フラッシュバックが起きているときは、左脳の働きが低下し、出来事を客観的に分析する力が弱まるため、物事への注意力や認識力が欠けがちです。その結果、自分が感じた怒りや恥辱を相手のせいにしてしまいやすくなります。
このような状態に陥ると、彼らは我を失い、感情のコントロールが効かなくなり、激しい怒りを相手にぶつけてしまうことがあります。彼らのそばにいる人は、仕返しをせずに対応することが非常に重要です。まずは、境界性パーソナリティ障害を持つ彼女を、童話のラプンツェルに例えてみましょう。彼女が怒りをぶつけてきたときは、ラプンツェルの中に潜んでいる魔女が表に出てきたと捉え、その魔女と対話するような気持ちで冷静に対処することが求められます。
11)やりたいことに取り組んでもらう
境界性パーソナリティ障害の人は、自分の好奇心に従ってやりたいことに取り組み、自信を深めることで、過去の自分と決別し、再び生きるという感覚を取り戻すことができます。こうして、身体に染み付いたトラウマの記憶からも抜け出すことが可能になります。しかし、長時間労働が続くと、仕事から帰ってきたときには疲れきってしまい、何をするにもエネルギーが残っていない状態になります。毎日が仕事に追われると、人生の目的や意義が見えなくなり、趣味にも興味を失い、人生そのものが楽しくなくなってしまうことがあります。
生きる目的や役割を見失うと、解離傾向が強まり、慢性的な空虚感に支配されがちです。そうなると、地に足がつかず、自分の軸を失い、エネルギーが尽きてしまったかのような、半ば眠っているような感覚に陥ることがあります。そばにいる人は、彼らの体力や精神的な状態に配慮し、仕事にどのように取り組むべきかを一緒に考えることが大切です。また、彼らが自分を優先する生き方を選べるよう、後押しし、たくさん褒めてあげてください。新しい道を作っていく手助けをすることで、彼らが未来を前向きに描き、より良い人生を歩む力を育んでいけるでしょう。
12)覚悟を持って接する
境界性パーソナリティ障害の人は、慢性的な空虚感や感情のコントロールが難しいこと、落ち着かなさ、興奮しやすさ、身体の不調、そして常に抱えている恐怖心など、多くの生きづらさを抱えています。彼らの苦しみを十分に理解し、その感情に寄り添うことが大切です。自分の感情をうまく処理できないため、その処理を家族や恋人に求めることが多くなります。
彼らのそばにいる人は、まず自分の思いを伝えるよりも、彼らの話をしっかりと聞き、共感することが求められます。特に、彼らが発する重要な言葉や感情に敏感に反応し、気持ちを汲み取ることが大切です。また、気長に、そして穏やかな態度で見守り続ける姿勢が必要です。こうした対応が、彼らにとっての安心感となり、少しずつ生きづらさを軽減していく助けになります。
13)傷つきやすく、空虚なので
子どもの頃から、親にしてほしかったことがたくさんありましたが、それを求めても叶わず、傷ついてきた経験があります。境界性パーソナリティ障害の人は、普通の人よりもはるかに傷つきやすく、その身体反応の過剰さや感受性は5倍から100倍とも言われるほどです。彼らはとても辛く、苦しい毎日を過ごしてきたため、自分の感情や感覚を切り離し、心を空っぽにして「良い自分」を演じ続けてきました。しかし、その結果、自分の内面にある空虚さと向き合うことができず、その虚しさを埋めるために、周囲の人とたくさんの時間を共有し、楽しむことを求めるようになります。この過程で、彼らと一緒にいる相手はしんどくなることが多いでしょう。
そばにいる人は、彼らの無理な要求に全て応えようとしなくても大丈夫です。ただ、可能な範囲で一緒に楽しい時間を過ごしてあげて、彼らが疲れて休みたくなったときは、無理せず休ませてあげることが大切です。適度な距離を保ちながら、共に過ごす時間を楽しむことで、彼らの空虚感を少しでも埋める手助けができるでしょう。
14)自分と似たような魂を持っている人に惹かれる
境界性パーソナリティ障害の人は、自分の価値観に合わないと直感的に判断すると、その関係を続けることが難しくなります。彼らは異なる価値観を受け入れるのが難しく、否定的な可能性ばかりを考えてしまい、それが精神的な負担となります。しかし、彼らは生きるか死ぬかの厳しい環境で育っているため、生き残るための強い仲間意識を持っており、熱い情熱を秘めています。
彼らは、魂を引き合わせてくれるような運命の人に強く惹かれます。そうした相手に対しては、自分の分身のように感じたり、自分ととても似た存在として一体感を求めることが多いです。この一体感によって、相手が自分の辛さに共感してくれたり、逆に相手の苦しみを理解できることで、精神的に深いつながりを感じ、安心感を得ることができます。
もし彼らのそばにいたいと願うなら、個人的な高潔さを持ち、彼らが抱えるような救いようのない悲しみを理解する必要があります。また、常に努力を続けられるような高い精神性を持つことが求められます。彼らとの関係を築くためには、深い理解と共感、そして絶え間ない努力が不可欠です。
15)多面性の悪い面も許容する
境界性パーソナリティ障害の人は、幼少期から過酷な環境で育ち、その中で生き残るために、非常に原始的な防衛機制を働かせてきました。彼らは、恐怖や怒り、痛み、恥ずかしさといった感情の葛藤を避けるために、しばしば自分を変性意識状態に置き、現実の困難を乗り越えてきました。このような環境で生き延びるために、彼らは多面的な人格を持つようになりました。
彼らの「天使」の部分は、機嫌が良く、優しく、愛情深いため、周りの人々の自己愛を満たしてくれます。しかし、その一方で、「悪魔」の部分は、些細なことで苛立ち、不機嫌になり、人を脅すこともあります。幸せそうに笑う人を憎く感じることさえあり、甘えや依存に対して強い嫌悪感を抱くこともあります。この二面性は、彼らが過酷な環境を生き抜くために培った能力の一部なのです。
もし彼らのそばにいるなら、彼らの「悪い面」を単なる問題行動としてではなく、過酷な環境を生き抜いてきた証として理解し、受け止めることが大切です。彼らの行動や感情の背景には、長年の苦しみや恐怖があることを理解することで、より深い関係を築くことができるでしょう。
16)身体感覚の回復には、瞑想やヨガ、ダンス、マッサージが有効
トラウマ体験によって命の危機に直面した経験は、身体に深く刻まれ、消えない記憶として残り続けます。特に、人間の悪意によってトラウマが引き起こされた場合、その激しい怒りや恐怖、反撃しようとした感情が心の中に潜んでいます。しかし、これらの感情は自分自身のものではないと感じたくなるのです。激しい感情が蘇ると、日常生活に適応できなくなってしまうため、無意識のうちにその「悪い部分」を心から分離し、排除することで、心の安定を保とうとします。
こうして、自分の感情や感覚を切り離していく過程で、次第に身体感覚がわからなくなり、自分が自分であるという感覚も希薄になります。その結果、自他の境界が曖昧になり、身体が空虚になっていきます。身体への意識が薄れると、冷たく硬直したり、手足が力を失ったり、痛みを抱えながら生きることを余儀なくされます。
再び身体感覚を取り戻すためには、身体に焦点を当てたセラピーやスポーツ、瞑想、ヨガ、ダンス、演劇、鍼灸、マッサージなどが有効です。これらの活動を通じて、トラウマによって凍りついた身体に新たなリズムを取り入れ、過去の「生きるか死ぬか」のモードから、新しい生き方へとシフトしていきましょう。
17)学術、芸術、武道、スポーツで怒りを発散する
虐待や過干渉によって、子どもが「良い子」であることを強要されると、その子どもは常に高いパフォーマンスを求められます。持続的な緊張とストレスの中で、体は闘争・逃走反応に染まり、心身が常に戦闘態勢を保つことになります。しかし、「良い子」であり続けるためには、相手に合わせなければならず、正常な怒りや自己主張は抑え込まれてしまいます。この抑圧された感情は、過食行動や、過剰に依存する対象に向かうことが多くなります。例えば、子どもは自分に好意を示してくれる人や、なんでもしてくれる相手に対して過度に依存してしまうことがあります。
このような状況にある子どもたちが、その抑圧された感情を健全に発散できるよう、適切なサポートが必要です。仕事や学業、芸術、武道、スポーツなど、適応的で前向きな方法でエネルギーを発散できる環境を整えることが大切です。これらの活動は、子どもが自分の感情を健全に表現し、自己肯定感を高める手助けとなります。結果として、子どもは抑圧された感情から解放され、心身のバランスを取り戻しやすくなるでしょう。
18)3つの約束事
境界性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃から複合的なトラウマを抱えていることが多いとされています。このため、支援者は彼らをさらに傷つけることがないように、また不安を増幅させないように、慎重に対応する必要があります。特に重要なのは、次の3つの約束を守ることです。
これらの約束が守られない場合、彼らは再びトラウマを感じ、過去の外傷が再演される可能性があります。その結果、激しい怒りや身体の凍りつき、極度の恐怖を引き起こすことがあります。支援者として、彼らの信頼を築き、安心感を提供するためには、この3つの約束を徹底することが不可欠です。
19)愛情を注ぐ
境界性パーソナリティ障害の人は、幼少期に不幸な経験をしたことから、無意識に理想的な両親像を求めています。そのため、たくさん抱きしめられたり、頭を撫でられたりといった愛情表現を受けることで、まるで母親や父親に愛されているかのように安心感を得ることができます。こうした温かい愛情が彼らに伝わると、冷たく硬直していた身体が解きほぐされ、全身に温かいエネルギーが巡ります。
しかし、彼らのそばにいる人が愛情を注がなくなると、たちまち愛を感じられなくなり、再び孤独感や不安に包まれてしまいます。境界性パーソナリティ障害の人にとって、安定した愛情は心身の安定を保つために欠かせないものであり、継続的に愛情を感じることが、彼らの安心感と自己肯定感を支える重要な要素となります。
20)デート中は
デート中は、家の中に閉じこもるだけでなく、気分転換を意識してみましょう。ドライブに出かけたり、自然の中を散策したり、好きな食べ物やお菓子、ぬいぐるみを一緒に探すなど、心がワクワクするような体験を提供することが大切です。複雑なトラウマを抱えている人は、自分を脅かす刺激に対して破壊的な反応を示しがちです。そのため、相手の体調に常に気を配り、心身を休めるような配慮が求められます。
辛いことを思い出させるような話題や、元恋人の話、異性との楽しそうな会話は避けるべきです。相手が自分の思い通りに過ごせる環境を作り、そばにいることで安心感を与え、愛情や幸せな体験を身体と記憶にしっかり刻むことが、心の安定と癒しに繋がります。このような積み重ねが、トラウマからの解放への第一歩となるでしょう。
21)嫌なことを避けて、快適に
境界性パーソナリティ障害の人は、非常に強い警戒心を持っており、周囲の状況や人々に過敏に反応します。彼らは常に自分を守ろうとし、顎や首、肩、背中のあたりが緊張しやすく、身体が身構えた状態になることが多いです。頭の中では、外の世界が自分にとって快適か不快かを絶えず評価し、嫌なことに直面すると身体が縮まり、硬直し、苛立ちや体調不良を引き起こします。こうした不快な状況を避けようとする傾向がありますが、それが難しい場合は、交感神経が活性化し、闘争・逃走反応を示すことがあります。
しかし、一方で好奇心を引かれる対象に対しては、近づきたいという感情が生まれ、前向きな関係を築き続けることができます。このように、境界性パーソナリティ障害の人は、状況や相手に対して過敏に反応しながらも、興味を持つ対象には積極的に接近することができるのです。
22)感覚過敏を理解する
境界性パーソナリティ障害の人は、複雑なトラウマの影響で常に警戒態勢をとり、神経が張り詰めています。そのため、人の気配や態度、表情、音、声、話す内容、匂い、振動、光など、周囲のあらゆる刺激に過敏に反応します。彼らは常に予期せぬ出来事が起こることを心配しており、そのために思考が止まらず、緊張や興奮が強すぎて、睡眠に障害が生じることがあります。
特に不快な状況では、交感神経が過剰に働き、過覚醒状態になってしまいます。これにより、焦りや苛立ちが募り、どう対処すればよいかわからなくなることがしばしばです。その結果、頭痛や腹痛、吐き気が生じたり、気が狂いそうになる感覚や意識を失うような症状が現れることがあります。身体が重く、動かせなくなることや、凍りついてしまうこともあります。
彼らのそばにいる人は、彼らの居住スペースにむやみに侵入せず、不快感を長引かせないように配慮することが大切です。また、彼らが不快な刺激に過敏に反応する背景には、自律神経系の調整不全があることを理解し、適切に対応することが求められます。
23)無理して相手に合わせてしまうので
境界性パーソナリティ障害の人は、幼い頃から親の機嫌を損なわないように常に先回りして行動してきました。その結果、周囲と自分を比べては、自分がどこかずれていると感じ、人間関係で失敗を繰り返してきました。そうした経験から、彼らは相手に合わせようと必死に努力しますが、その努力が過度になると、やがて疲れ果ててしまい、最終的には感情が爆発してしまうことがあります。
彼らのそばにいる人は、無理をさせないように配慮し、一人で過ごす時間を増やして、心と体をリフレッシュできる環境を整えることが大切です。彼らにとって、ゆっくりと自分自身を取り戻す時間を持つことが、安定した生活を送るための重要な要素となります。
24)大事な関係ほど自分から壊してしまう
境界性パーソナリティ障害の人は、孤独や寂しさに耐えられず、愛せる対象を見つけると「好き」「嫌いにならないで」「見捨てないで」と願いながら恋愛関係に進みます。しかし、その根底には深い人間不信があり、身体的にも痛みや不快感を抱えています。恋人との信頼が深まるほど、逆に傷つきやすくなり、人間関係が脅威となってしまうため、無意識にその関係を壊したいという防衛本能が働くことがあります。
彼らのそばにいる人は、自分が脅威の対象とならないよう、慎重に接することが重要です。また、境界性パーソナリティ障害の人は、追いかけられることを嫌う傾向があるため、彼らが自分を追いかけたくなるような、安心感と信頼を築ける関係性を目指すことが大切です。
25)自分も相手も喜ぶことが好き
境界性パーソナリティ障害の人は、しばしば落ち込んだり、悲しんだり、孤独を感じたり、怒りを抱いたりすることがあります。また、寂しさや焦りからも心が不安定になりやすいです。そのため、心に元気がなくなると、エネルギー切れを起こして体調不良に繋がりがちです。しかし、彼らは人を喜ばせることが大好きで、サービス精神が旺盛です。相手が喜んでいる姿を見ると、自分も楽しくなり、元気を取り戻せます。だからこそ、彼らのそばにいる人は、一緒に楽しむことを大切にしてあげてください。相手の喜びが、彼らにとって大きなエネルギー源となるのです。
26)解離状態
ストレスがかかると、境界性パーソナリティ障害の人は、動けなくなって固まり、1点を見つめたり、ぼーっとしたりする解離状態に陥ることがあります。こうなると、現実と夢の境目が曖昧になり、自分自身がよくわからなくなるのです。彼らが解離して凍りついているときは、そばにいる人が思いやりをもって関わることが大切です。例えば、手を優しく握る、背中をさする、心地よい香りを嗅がせる、好きな音楽を流す、そしてぎゅっと抱きしめてあげるなど、安心感を与える行動が効果的です。また、切迫した状況に追い込まれないよう、環境を整え、解離状態を防ぐことにも気を配りましょう。
27)妄想状態
トラウマを抱える人は、些細な出来事にも過剰に反応しやすく、不安や動揺を感じやすい傾向があります。その結果、過覚醒状態になりやすく、全身の筋肉が緊張し、周囲の状況が危険かどうかを入念に調べ、どう行動すべきかを考え続けます。このように細部まで気にしながら、最悪の事態を想定するうちに、情緒が不安定になり、過去の辛い記憶に引きずられてしまいます。不安や恐怖が増すにつれて、自分が特殊な存在だと感じたり、猜疑心が強くなったり、誰かに監視されていると思い込んだり、隣人から攻撃を受けていると信じ込むなど、特殊な妄想にとらわれることがあります。これにより、現実を正確に捉える能力が低下してしまうのです。
しかし、境界性パーソナリティ障害の人が抱えるこうした妄想は一過性であり、比較的短期間で治まることが多いです。彼らが過去の辛い記憶から現在に戻ってくる際には、見捨てることなく寄り添うことが非常に重要です。あなたがそばにいることで、彼らは現実に戻り、安心感を取り戻すことができるのです。
28)恐怖状態
大きな衝撃を受けると、身体が凍りつき、震えが止まらず、強烈な恐怖に襲われます。このような感情に圧倒されると、自分が自分でなくなったように感じ、混乱に陥ることがあります。恐怖に囚われた状態では、全身が恐怖で満たされ、周囲のものがすべて敵のように見えることさえあります。一つのトラウマが蘇ると、それが引き金となり、過去のトラウマが次々と連鎖的に思い出されることもあります。その結果、喉が詰まったような息苦しさや胸の痛み、頭痛、腹痛、めまい、吐き気などの身体症状が現れ、日常生活の役割を果たすことが難しくなります。
こうしたトラウマによる凍りつきや荒廃した状態を避けるために、境界性パーソナリティ障害の人は、自身の人格を分裂させるような防衛メカニズムを持つことがあります。彼らは過去のトラウマに対して一定の距離感を持ち、離人感を伴いながら関わることができますが、身体的な感覚を伴うことには強い抵抗を感じます。彼らのそばにいる人は、トラウマを避けようとする彼らの努力や、正常な生活を送ろうとする姿勢を尊重し、支えていくことが求められます。
29)独占欲が強く、他の人と仲良くされるのが嫌
境界性パーソナリティ障害の人は、自分に対して強い依存心を抱き、常にそばにいてほしい、必要とされたい、そしていつでも自分の味方でいてほしいと強く願っています。パートナーや親が他の人と話しているだけで、ひとりぼっちになったように感じ、落ち込みやすくなります。このとき、体は発汗し、筋肉がこわばり、まるで自分が不要な存在であるかのような深い傷つきを感じることがあります。さらに、自己評価が急激に低下し、自分がどこか遠くに押しやられるような感覚に陥ることもあるのです。
こうした状況に対応するには、パートナーはできる限り一緒に時間を過ごすことが大切です。さらに、「あなたが必要だよ」「あなたが一番大切だよ」といった言葉を、積極的に伝えることが求められます。また、連絡には迅速に応答することが、安心感を提供するうえで非常に重要です。これらの行動が、彼らの不安を和らげ、関係を安定させる助けとなります。
30)気分や身体感覚の浮き沈み
境界性パーソナリティ障害の人は、恋人や配偶者がいなくなると、一気に寂しさと気分の落ち込みに襲われます。この感情の波は心身に大きな影響を及ぼし、重苦しさが身体に広がり、手足が冷たくなり、寒さを感じることがあります。しかし、恋人や配偶者にハグしてもらうと、途端に全身が軽くなり、温かさが戻ってくるのです。
彼らは、恋人や夫婦間の関係が悪化すると、体調を崩したり、感情の浮き沈みが激しくなったりして、一時的に相手を非難することがあります。たとえば、感情が高ぶって「自分勝手だ」「大嫌い」と言ってしまうことがあるかもしれませんが、同時に「どこにも行かないで」「私を必要として」といった強い依存心も抱いています。
このように、彼らは自分の不安定さをしばしば相手のせいにしがちです。そのため、パートナーは自分が振り回されていると感じることが多く、二人の関係は膠着状態に陥りやすくなります。相手を理解し、共にバランスを見つける努力が、関係をより健全に保つために重要です。
31)依存してしまう
自分に安心感がなく、身体の中にトラウマを抱えているため、家で一人で過ごすことが難しい人がいます。彼らは、何もせずにじっとしている時間や嫌悪感を引き起こす刺激が、トラウマのトリガーとなり、すぐに交感神経が活性化してしまいます。これにより、落ち着きがなくなり、動き回りたくなる衝動に駆られます。このような不安や不快感が頻繁に繰り返されるため、自分一人では対処できず、恋人に依存して問題を解決してもらおうとすることがあります。
恋人がいない場合や、自分で問題を解決するのが難しい場合、彼らはSNSで新しい出会いを探し、外に出て気分を紛らわせる手段を求めることがよくあります。そして、恋人やアルコール、薬物、ギャンブル、セックス、買い物など、一瞬でも自分の苦痛を忘れさせてくれるものに依存しがちです。彼らは、自分を元気にするためなら、常識を超えた行動を取ることもあり、普通の人が躊躇するような領域まで踏み込んでしまうことがあります。
パートナーにとって、彼らの行動は理解し難いかもしれませんが、これらの依存や嗜癖行動は、トラウマによる過覚醒、凍りつき、死んだふりのような身体感覚や感情に耐えられないがための結果であると理解することが重要です。
32)パートナーとの関係により
境界性パーソナリティ障害の人は、恐怖によって身体が麻痺し、凍りついてしまうことが多く、その結果、体内のエネルギーの流れが悪くなります。この状態が続くと、身体の調子が悪化し、人間関係がうまくいかないことへの辛さや、埋まらない感覚に苦しむことがあります。パートナーとの関係が良好なときは、気分が高揚し、何でもできそうな気分になりますが、逆に関係が悪化すると、一気に気分が落ち込みます。
その落ち込みから立ち直ろうとすると、不安から駄々をこねたり、相手を支配したいという欲求が湧き、時には投げやりな行動を取ることもあります。また、パートナーが浮気しているのではないかと疑い、相手のSNSや携帯を覗き見することもあります。さらに、パートナーから100%の安心を求めれば求めるほど、不安は増大し、相手の欠点を探してしまいがちです。これにより、パートナーに「めんどくさい」と思われたり、自分自身が不安を見つけ出して被害妄想にとらわれたり、怒鳴ってしまったり、衝動的に別れを切り出してしまうこともあります。
こうした過剰な反応は、パートナーとの関係において些細なことでも不快に感じやすくなります。パートナーの言葉や態度が冷たく感じると、全てを否定されているように思い込み、「自分は疎外される存在だ」という信念が強化され、必要以上に落ち込んでしまうのです。
参考文献
小此木啓吾、深津千賀子、大野裕「精神医学ハンドブック」創元社 2004年
トラウマケア専門こころのえ相談室
論考 井上陽平