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回避性パーソナリティ障害の治し方


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 第1節.

恋愛を回避してしまう人の治し方


回避性パーソナリティ障害は、好きな人ができても傷つくことへの恐れから距離を置いてしまうのが特徴です。この障害の背景には、親子関係のこじれ、発達障害の傾向、性被害によるトラウマ、初恋での傷つきなど、さまざまな要因が絡んでいることが多いです。心の奥底には「もう二度と傷つきたくない」という強い思いがあり、その結果、自己防衛の力が強く働き、新しい人に心を開くことが非常に難しくなります。また、人に対する愛情が湧かず、相手の気持ちに応えられるだけの感情が持てないこともあります。こうした状態では、たとえ相手を好きだと感じても、その気持ちを素直に表現することができず、関係を深めることが困難です。

 

1. 心の動きとその影響

 

好きなのに傷つくことを避けてしまう心の動きは、個人の意志だけではなかなか克服できないものです。回避性パーソナリティ障害を克服するためには、主に二つの方法が考えられます。ひとつ目はカウンセリングを受けることです。これは、専門家のサポートを受けながら、過去のトラウマや内面的な葛藤と向き合い、徐々に心を開く練習を行っていく方法です。二つ目は、利他的で優しく、本当に愛してくれる人と関わりながら、その人から愛情を受け取ることで、自分の心を癒していく方法です。ここでは、まずカウンセリングについて詳しく説明します。

 

2. カウンセリングの重要性

 

カウンセリングでは、自分がなぜ人間関係を避けるのか、なぜ心を閉ざしてしまうのかという深い部分に焦点を当てて探求します。カウンセラーとの信頼関係の中で、自分の感情や思考を言語化し、自分自身を理解することで、少しずつ自分を解放していくことができます。また、カウンセリングを通じて、自分の過去の傷やトラウマに対する新しい視点を持つことができるようになります。これにより、対人関係に対する恐れが和らぎ、徐々に新しい人間関係を築く力が育まれていきます。

 

このプロセスは時間がかかるものですが、焦らず一歩一歩進んでいくことが大切です。カウンセリングは、回避性パーソナリティ障害を克服するための重要なステップとなり得ます。そして、このステップを踏むことで、徐々にですが確実に、人との関係に対する安心感や、自分を開く勇気が芽生えてくるでしょう。

 第2節.

カウンセリングの方法


回避性パーソナリティ障害の治療目標は、好きな人と愛し合い、幸せな関係を築くことです。この目標に向かうためには、まずは自身の過去や現在の心の動きをセラピストに包み隠さず話すことが重要です。セラピストはあなたの話を受け止め、共感しながら丁寧に応答します。このような対話を通じて、心や精神、身体の内部を緻密に分析し、なぜ人との距離が近づくと不安になり、嫌われることが怖くなったり、相手に合わせすぎて疲れてしまったりするのか、その原因を一緒に探っていきます。

 

1. 回避行動の理解と自己肯定感の向上

 

回避性パーソナリティ障害を持つ人は、たとえ好意を寄せてくれる相手がいても、自分自身を好きになれないため、関係を続けることが難しくなることがよくあります。そこで、自己肯定感を高める支援が不可欠です。セラピーでは、自己肯定感を育てながら、愛について深く考え、愛を育むことが大切です。カウンセリングを通じて、対人恐怖を少しずつ克服し、真の意味で人と愛し合えるようになることが目指されます。

 

そのプロセスの中で、カウンセリングの重要なステップの一つに、過去のネガティブな記憶を振り返る作業があります。これは、過去のトラウマや心の傷に向き合うための大切なプロセスであり、これによって自分自身を深く理解することが可能になります。回避性パーソナリティ障害を持つ人々は、しばしば痛みや恐怖から逃れるために、過去のネガティブな記憶を封じ込めようとします。しかし、これらの記憶を無視することは、根本的な問題を解決せず、むしろ心の中で膨れ上がり続ける原因となります。このように、自己肯定感を高めるための支援と過去の傷に向き合うプロセスを組み合わせることで、回避性パーソナリティ障害の克服に向けた一歩を踏み出すことができるのです。

 

2. ネガティブな記憶を振り返る

 

カウンセリングでは、セラピストのサポートを受けながら、これらのネガティブな記憶を少しずつ振り返ります。セラピストは安全で支えのある環境を提供し、クライエントが無理なくこれらの記憶に向き合えるようにします。このプロセスを通じて、クライエントは自分の過去の経験に対して新しい視点を持つことができ、以前は痛みや恐怖に直結していた記憶を、より冷静に、そして客観的に見つめ直すことが可能になります。

 

3. 新しい思考や行動パターンの形成

 

過去のネガティブな記憶に向き合うことができた後、カウンセリングの次の段階では、新しい思考や行動パターンを形成していくことが目指されます。これまでの行動パターンは、しばしば過去のトラウマに基づいた自己防衛的なものであり、人間関係を築く上での障害となっていました。そこで、カウンセリングを通じて、より健康的で建設的な思考と行動パターンを学び、実践することが重要です。

 

たとえば、過去に人間関係で傷ついた経験から、誰かと親しくなることに対して恐怖心を抱いていた場合、セラピーの中でその恐怖心がどのようにして生まれたのかを理解し、それに対処するための新しい思考パターンを探ります。そして、少しずつ実生活での行動に反映させることで、より良い人間関係を築くための土台を築いていきます。

 

4. 小さな成功体験を積み重ねる

 

この新しい思考や行動パターンを取り入れる際には、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。カウンセリングでは、クライアントが新しい行動を試み、成功を感じることができるような状況を設定します。たとえば、まずはセラピストとの信頼関係を築き、次に日常生活での小さなチャレンジに取り組むといったステップを踏みます。こうした成功体験が積み重なることで、自己肯定感が高まり、回避的な行動パターンから抜け出すための自信が生まれてきます。

 

5. リラクセーションと身体の気づき

 

しかし、これらの作業はしばしば大きな困難を伴います。多くの場合、回避性パーソナリティ障害の人は、人を好きになること自体が難しいため、単なる対話だけでは不十分なことがあります。そこで、リラクセーションや呼吸法、マインドフルネス、瞑想などの技法を取り入れることで、身体と心をリラックスさせ、生物学的な反応(過剰な警戒、恥や恐怖からの逃避、凍りつき)に耐え忍べるだけの心の成長を促します。

 

6. 日常生活での実践

 

日常生活の中では、苦手とする場面で身体の神経が危険を察知し、条件反射的に動いてしまうことがあります。このような状況に対処するためには、自分の身体の筋肉の伸び縮みや姿勢、態度、動きを冷静に観察することが重要です。不快な感覚や感情に耐え忍ぶ力を養い、身体に閉じ込められた闘争・逃走反応を徐々に放出することが目標です。最終的には、過剰な警戒状態から脱却し、安心感に基づく社会交流システムを活性化させることで、今を楽しみながら生きる力を身につけることが支援の目的となります。

 第3節.

回避性人格障害の生物学的メカニズム


回避性パーソナリティ障害を持つ人々は、幼少期に深く傷つくような体験をしており、さまざまなトラウマを抱えています。このトラウマは、発達早期に形成されることが多く、その後の人生に大きな影響を与えます。たとえば、自分を理解してくれそうな人や、距離を縮めようとしてくれる人が現れたとしても、その人とのやり取りでしばしば躓いてしまい、気持ちが落ち着かない日々が続きます。彼らは、トラウマによる防衛機制が働き、相手の表情や言動を常に先読みするようになります。その結果、本当に心を開いて話すことができず、次第に疲れてしまいます。このようにして、自分を偽った会話に意味を見出せず、気持ちが冷めていくこともあります。また、繊細で神経質な性格から、相手のちょっとした言動でも心に突き刺さり、凍りついてしまうことが多いため、不快感を感じて逃げたくなるか、距離を置きたくなります。しかし、距離を縮めたいと思える相手が現れると、今度は自分が嫌われてしまうことへの恐怖から、相手に合わせるしかなくなり、徐々にその関係を維持することが難しくなります。

 

1. 回避の理由とその背景

 

回避性パーソナリティ障害の人が回避行動を取る理由は、人それぞれに異なります。例えば、幼少期から自分の気持ちを理解してもらいたいと願ってきたものの、実際にはその願いが叶うことが少なかったため、諦めの気持ちが根強く残っています。また、自分のことを知られすぎるのが怖いという感情や、相手が近づいてくると「自分の中に入ってこないで」と感じてしまうため、自然と距離を置こうとします。さらに、自分が誰かを好きになり、その相手からも好意を持たれると、一生懸命頑張るほどに失うことへの恐怖が大きくなり、取り返しのつかない恐怖に苛まれます。孤独であることは寂しさや悲しみを増大させ、不安定な状態へと導きます。また、甘えたり無防備になったりすることへの恐怖から、人を愛することに対する戸惑いが生まれ、どう振る舞えばいいのか、感情をどう扱えばいいのか分からなくなります。その結果、相手から期待するような反応が得られなかったり、連絡が途絶えたりすると、落ち着かなくなり、日常生活がうまく回らなくなってしまいます。

 

2. トラウマの影響と身体的な反応

 

過去のトラウマが大きいほど、人と繋がることで感情が著しく覚醒し、その反面、ブレーキがかかり凍りつくような感覚に襲われます。これにより、胸が苦しくなったり、動悸がしたり、ソワソワしたり、イライラしたり、体が震えたり、さらには過呼吸や、何も感じられなくなるといった状態に陥ることもあります。不快な状況になると、身体に直接影響が出てくるため、大切な人との関係を続けていくことが難しくなり、無意識のうちに逃げられない状況を避けるようになります。また、自分がコントロールできなくなるような事態に陥るのを防ぐため、自分から人間関係を切り離すこともあります。こうした場合、距離が近くなる瞬間や感情が高まるときに、過剰な覚醒から麻痺(凍りつき)が生じるメカニズムを自分で理解することが重要です。さらに、過剰な覚醒や複雑な感情に耐えられるようなメンタルを育て、腹側迷走神経の働きを良くして、安心して落ち着いていられるようにすることが求められます。

 第4節.

空想への没入傾向


回避性パーソナリティ障害を持つ人々は、しばしば空想の世界に没入する傾向があります。これは、大人になった今でも、嫌な問題やストレスに直面したときに顕著に現れます。現実の人間関係が複雑になったり、自分にとって困難な状況に陥ったとき、彼らは現実をリセットし、空想の世界に逃避することで一時的な安らぎを得ようとします。この空想の世界では、内なる自分を保護する心の内的人物像が存在し、その保護者の声に耳を傾けながら生きることができます。こうした内的なドラマは、彼らにとって秘密の避難場所であり、外の世界の人々と結びつく喜びを徐々に失わせる原因ともなります。

 

1. 空想と現実のバランス

 

空想の世界に没入することで、現実との関わりを避けるようになると、自分自身が次第に現実感を失い、心の中での不安が増大していきます。現実と関わる能力が弱くなると、自分が自分でなくなるような感覚に陥り、不安感が強まる一方です。その結果、現実の人間関係や社会との接触がますます困難になり、孤立感が深まります。これは回避性パーソナリティ障害の人々にとって、非常に苦しい状態です。

 

2. カウンセリングにおける空想と現実の統合

 

外の世界の人々と繋がりを持つためには、空想の世界に戻ろうとする内なる自分と闘う必要があります。これを実現するために、カウンセリングではクライエントの一者的な空想世界と、クライエントとセラピストの二者関係で生じる思いやりと愛情に満ちた移行空間の間を行き来しながら、少しずつ外の世界とのつながりを取り戻していく支援が行われます。

 

カウンセリングの場では、クライエントが自身の空想に深く入り込むことを理解しつつ、その空想の世界と現実とのバランスを取るための手助けが行われます。セラピストは、クライエントが空想の世界で感じる安心感を尊重しながらも、現実の世界でのつながりを築くためのステップを一緒に考え、導いていきます。このプロセスでは、クライエントが空想の世界から抜け出し、現実との対話を進める中で、自己肯定感を高め、現実世界での自己存在をしっかりと確立していくことが目指されます。

 

3. 現実との対話を通じた回復

 

カウンセリングでは、クライエントが空想の世界に逃避する理由を探り、その背景にある感情やトラウマを丁寧に掘り下げていきます。そして、セラピストとの対話を通じて、少しずつ現実とのつながりを取り戻すためのアプローチを学んでいきます。この過程で重要なのは、クライエントが現実の人間関係において、安心感や信頼感を育むことです。それは、空想の世界だけでなく、現実の世界でも満足感や喜びを感じられるようになるための鍵となります。

 

最終的には、クライエントが現実の世界での自分自身の居場所を見つけ、空想の世界と現実の世界とのバランスを取りながら、健全な人間関係を築けるようになることが目標です。カウンセリングを通じて、このプロセスを一歩一歩進めていくことで、クライエントは真の回復を目指すことができます。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

更新:2020-06-12

論考 井上陽平

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