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依存性パーソナリティ障害の特徴をチェック


1. 依存性パーソナリティ障害の特徴と背景

 

依存性パーソナリティ障害を抱える人々は、しばしば非常に怖がりで、落ち着きがなく、自分に対する自信が欠如していることが特徴です。このような人たちは、他人に強く依存しがちであり、しばしば他人にしがみつくような行動を取ります。依存や嗜癖の問題が深刻であり、自分の面倒を誰かに見てもらいたいという強い欲求を持つことが多く、何かをしようとする際にも一人ではうまくできないという状況に陥ります。

 

依存性パーソナリティ障害の人々は、性格的に寂しがり屋であり、他者の存在を通じて安心感や安全感を得てきました。しかし、一人になると、その安心感を失い、自分の役割が無くなったように感じ、どうしてよいか分からなくなります。誰かがそばにいることで、初めて自分という存在が成り立つと感じるため、他者の不在は彼らにとって非常に大きな問題です。

 

このような背景から、依存性パーソナリティ障害の人は、何かに依存することで自分を保とうとしますが、一人になるとその依存の支えが無くなり、その空間にいること自体が難しくなります。孤独や寂しさに耐えられず、誰かを求めて衝動的に行動したり、胸の締め付けや呼吸困難といった身体的な苦痛を感じたり、自分が自分で無くなるような恐怖に襲われることがあります。もともと自分自身に対する確固たる認識がないため、他人から何らかの役割が与えられないと、自分の軸が揺らぎ、不安定になります。

 

2. 原因としてのトラウマと母子関係

 

依存性パーソナリティ障害の背後には、いくつかの複雑な要因が絡み合って存在します。主な原因としては、発達早期のトラウマや複雑なトラウマ、母子関係のこじれ、神経発達の問題、生まれ持った資質の弱さが考えられます。これらの要因は、個々のケースによって異なる組み合わせで現れ、人格形成に深い影響を及ぼします。

 

例えば、過去に恐ろしい外傷体験を被った場合、その時の経験が心と体に深く刻まれ、長期間にわたって影響を及ぼします。助けを求めても誰も助けてくれず、逃げることもできずに捕まってしまったとき、その無力感と恐怖は、体と心に強いショックを与えます。このショックは、一人でいることに対する強い不安感を引き起こし、一人になると誰かに助けを求めたくなる気持ちが強まります。「一人にしないでほしい」という強い願望が生まれ、他者への依存が強くなります。

 

さらに、母子関係において愛着形成に問題がある場合、その影響はさらに深刻です。乳幼児期において、母親との間で心の安全基地が十分に築かれなかった場合、子どもは外の世界を自由に探索することが困難になります。このような状況では、子どもが外部の環境に対して過度な警戒心を抱き、自由に行動することができなくなります。

 

また、母親の情緒的な応答性が悪かったり、母親が頻繁に不在だったりする場合、子どもは心身のバランスを欠いたまま育つことになります。その結果、恐れや不安などの情動を自己調整する力が十分に発達せず、常に不安定な状態で生活することになります。この不安定さは、成長過程で強化され、依存性パーソナリティ障害の根本的な原因となり得ます。

 

3. 恐れと不安に悩まされる幼少期

 

赤ん坊の頃から、引っ込み思案で、怖がりで不安感が強かったため、周囲の環境に対して過敏に反応していました。母親が安全基地としての役割を果たせなかったため、探索行動に出ても、どちらに進むべきかわからず、しばしばおろおろと戸惑っていました。新しいことに挑戦する際には、恐怖を感じ、ふらふらと迷いが生じることが多かったのです。

 

周囲の目が自分に集まると、焦りが一気に高まり、どうしていいのか分からなくなります。その結果、身体に異変が現れ、パニックに陥ることもしばしばでした。頭が真っ白になり、言葉が出てこなくなる、お腹が痛くなるなど、こうした状況は、「また失敗してしまった」という感覚をさらに強めました。幼少期から、人間関係がうまくいっていないと感じ、自分に自信が持てず、対人恐怖に苦しむようになりました。

 

現実に対する恐怖感が強まると、誰にも守られていないように感じ、安心感を求めて愛着対象に頼りたくなります。しかし、誰もいないと感じた時には、自己否定が強まり、心が苦しくなります。そのため、何も感じないように心を閉ざしたり、頭の中で空想を広げて現実逃避を試みることがよくありました。

 

集団の中にいると、恥をかきたくないという気持ちが過度な緊張を引き起こし、感情が高まると、顔が赤くなり、胸がドキドキする、汗をかく、手が震える、体が痺れるといった身体症状が現れます。これらの症状は、心の落ち着きを奪い、最終的にはその場から逃げ出したくなる強い衝動に駆られます。

 

4. 人間関係における深い結びつきの難しさ

 

大人になった今でも、多くの依存傾向の強い人々は、他者との関係において深いところまで入り込むことができず、自分が現実と直接関わっているという感覚を持てないまま生活しています。現実感の希薄さは、自己の存在意義や自分自身との結びつきに対する不安感を強化し、それがさらに他者への依存を深める原因となっています。

 

依存傾向が強い人は、自分の内側に潜む恐れや不安を非常に強烈に感じやすいです。特に、無力感に陥ったとき、その恐れや不安はさらに増幅され、どうにかして安心感を得ようと必死になります。このような時、彼らは他者にしがみつきたくなり、その関係が自分を支えてくれるまで、相手を離そうとはしません。このしがみつき行動は、周囲の人々を巻き込み、依存者が安心や元気を感じるまで続くことが多いです。

 

依存性パーソナリティ障害を抱える人々の多くは、子どもの頃から孤独を感じてきた経験があります。彼らは、人との間に常に距離を感じ、そのために自分自身がつかみどころのない性格を持つことが多いです。こうした背景から、彼らは幼少期において、母親や家族の誰か、あるいは空想上の人物に対して強い依存を示し、常にその存在にべったりとくっついて過ごすことが多かったのです。このような依存的な行動は、彼らが他者との関係において安心感を得る唯一の方法であったかもしれません。

 

5. 恐怖と辛さがもたらす身体と心の硬直

 

もともと怖がりな性格であり、さらに非常に辛い日々を繰り返してきた結果、身体がギュッと縮こまってしまい、まるでロックされているかのような状態になっています。この長年にわたる無意識下での凍りつき状態が続くと、自己感覚が徐々に麻痺していくのです。身体が麻痺することで、自分と他者との境界線が曖昧になり、他者との区別がつきにくくなってしまいます。その結果、恐怖心と依存心がますます強まり、自己感覚の希薄さが深刻化していきます。

 

自己感覚が薄れると、自分自身を満たすことができなくなるため、他者を通して自分を満たす必要性が高まります。身体の過緊張や凍りつきを緩めるために、幼少期から母親や家族の誰かにくっつき、頼り、すがることで心の安定を図ってきました。これにより、一時的にでも自分自身を楽にすることができたのです。

 

普段から、自分のことよりも他者の反応に非常に敏感であり、常に「自分は迷惑をかけていないだろうか」「相手はどんな気持ちでいるのだろうか」と考えています。一人でいるときは、不安を埋めるために空想の世界に浸り、愛着対象のことばかり考えることが多いです。これにより、現実から逃避し、自分を守ろうとしているのかもしれません。

 

6. 恋愛依存と感情の不安定さ

 

大人になった今でも、自分が好きな人に嫌われることが怖く、その人が自分のもとから離れていくのではないかという不安に常に悩まされています。この不安が強まると、その人が他の誰かと話しているだけでも強い嫉妬心が芽生え、見捨てられることへの恐怖が一気に高まります。その結果、相手を質問攻めにしたり、イライラが募って言い争いに発展することもあります。

 

本人にとって、好きな人との関係が人生のすべてであり、その人と繋がっていることだけが重要です。恋人のことが頭から離れず、とにかく愛されたい、構ってほしいという強い願望に駆られ、相手のために全力を尽くします。他のことは二の次で、愛されることに全力を注いでいるのです。しかし、この過度な依存が逆に不安を増幅させ、関係をますます複雑にしてしまうことがあります。

 

依存できる相手との恋愛関係が終わると、一人で過ごす時間が増え、自分自身と向き合わざるを得なくなります。しかし、自分に向き合うことは容易ではなく、内なる虚しさに引き込まれ、過去のトラウマが再び蘇ることで、心がソワソワと落ち着かなくなります。この焦燥感から、イライラや胸の痛みを感じ、未来への不安が強まります。そして、その不安を紛らわすために、次の恋愛相手を急いで見つけようとします。

 

彼らは、自分一人では十分に生活できないと思い込んでおり、一人になると心が落ち着かず、寂しさを抱えることができなくなります。そのため、誰でもいいからと出会い系アプリを利用し、複数の人と同時に付き合うこともあります。一人でいると、孤独感や不安に押しつぶされ、何も手につかず、漠然とした恐怖に襲われてしまいます。この恐怖感が強まると、どうしていいかわからなくなり、動けなくなってしまうのです。

 

「自分はもうダメだ」という気持ちが先行すると、過去の失敗体験にとらわれ、悪いことばかりを考えてしまい、その考えに振り回されます。その結果、じっとしていられず、何かをして自分を元気にしようとするか、逆に身動きが取れなくなり、引きこもってしまうことがあります。このような状況に陥ると、ますます孤独感と不安が強まり、悪循環に陥ってしまいます。

 

7. 他者との関係における安心と不安

 

一人で生きていくことが想像できず、自分で自分を満たす方法が分からない状況では、何かを選択する力も欠如し、心が迷子になってしまいます。こうした状態では、生活を続けていくために他者の存在が不可欠となり、その結果、他者を利用してでも自分の欲求を満たそうとします。

 

人に依存しながら、自分の好きなことをする一方で、相手が自分の思い通りに動いてくれると、安心感と幸福感を得ることができます。このとき、相手が自分のために何でもしてくれると信じており、そのために自分も相手のために何でも頑張ろうと、一生懸命に尽くします。自分が愛され、大切にされるために努力を重ねますが、同時に、相手も自分の期待に応えるべきだという強い思い込みがあります。

 

しかし、このような過度な依存から生じる期待は、しばしば相手に対する過剰な要求となり、相手が期待に応えられなかったときに、強い怒りや不満が生じます。自分では処理しきれない負の感情が溢れ出し、その感情を相手にぶつけることで解消しようとする傾向があります。こうした行動は、依存される相手にとって大きな負担となり、徐々に関係が手に負えなくなっていくのです。

 

依存される相手は、しばしば過剰な依存と感情のぶつけ合いに巻き込まれ、関係が次第に悪化していきます。最初は相手のためにと尽力していたものの、次第にその負担が大きくなり、手に負えなくなることが多いです。相手が抱える負の感情や期待を全て引き受けることは困難であり、結果として、関係そのものが壊れてしまうこともあります。

 

8. 日常生活における影響と対処法

 

日常生活の中で、常に他人の顔色を伺い、自分がどのように見られているかを気にしてしまいます。その結果、自分自身の判断や考えに自信を持つことができず、何をするにも迷いや不安がつきまといます。恥をかいたり、怒られたりすることへの強い恐怖心から、身体が自然と緊張しやすくなります。

 

恐怖が高まると、身体はさらに緊張し、頭がぼーっとしたり、体が固まってしまったり、表情がなくなったりすることがあります。また、現実感が失われ、まるで自分がそこに存在していないかのように感じることもあります。このような状態は、心身ともに強いストレスを引き起こし、日常生活を困難にします。

 

特定の依存対象以外の人との対人関係では、強い対人恐怖や身体症状が現れるため、安全な場所に逃げたいという強い衝動に駆られます。対人関係がうまくいかないと感じると、危険を察知してその場を回避しようとします。しかし、逃げ場がなくなると、心と体がフリーズしてしまい、呼吸が苦しくなり、最終的にはぐったりと疲れ果ててしまいます。

 

このように、他人の目を気にするあまり、自分に自信を持てず、常に不安と恐怖がつきまとう日常を送っています。恐怖が身体に与える影響は大きく、現実感の喪失や身体症状の悪化を引き起こし、さらに対人関係を困難にします。この悪循環を断ち切るためには、恐怖と向き合い、少しずつ自分の判断や考えに自信を持つ練習が必要です。

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依存性人格障害のチェック10項目


1. 孤独感と依存傾向

 

依存性パーソナリティ障害の特徴として、強い孤独感に耐えられず、他人に過度に依存する傾向があります。一人でいることが耐えられず、自己否定感が強まると、自己存在を保つために他者に依存しがちです。他者に依存することで、自分を満たそうとしますが、それが一層依存を深める原因となります。

 

2. 自己不安と他者依存

 

自己否定感や自己不安が強く、他者に依存することで自分を安定させようとします。自己の軸が不安定で、自分の存在感が希薄なため、他人の存在が非常に大きく感じられます。この依存により、常に緊張や警戒感を持って生活し、他者の反応に過剰に敏感になります。

 

3. 役割と自己感覚の乖離

 

彼らは心と体が分離しているかのような感覚に陥り、社会の中で期待される役割を演じることに従っています。自分自身がどのような存在であるかを見失いがちで、他者からの評価や役割によって自己を定義しようとします。

 

4. 新しい経験への恐怖

 

新しいことを始めたり、新しい場所に行くことに対して強い抵抗感を抱いています。責任を避け、批判されることを恐れるため、未知の状況に対して非常に消極的です。この恐怖が自己成長を阻む要因となり、過度な依存につながります。

 

5. 他者の視線と評価への過敏さ

 

他者の視線や評価に過敏であり、人からどう思われているかを常に気にしています。これは、他者からの評価によって自己価値を確認しようとするためであり、自分の判断や考えに自信が持てないため、常に他者の反応に依存しています。

 

6. 見捨てられ不安と対人関係の不安定さ

 

見捨てられることに対する強い不安を抱えており、特に親しい人が他の誰かと関わることに対して過剰に敏感になります。この見捨てられ不安は、対人関係を非常に不安定にし、孤独感をさらに強める原因となります。

 

7. 恋愛依存と感情の不安定さ

 

彼らは恋愛に依存しやすく、異性の関心を引こうとする傾向があります。しかし、恋愛関係においても自己不安が強いため、感情が不安定になりやすく、依存が強まると感情の爆発を引き起こすことがあります。

 

8. 感情と身体の過剰反応

 

予期不安やストレスが高まると、パニックや身体症状が現れやすくなります。これは、感情の抑制が効かなくなり、過度な緊張や過敏さが身体に直接的な影響を与えるためです。

 

9. 現実逃避と代替行動

 

依存対象が得られないときや、現実が厳しいと感じたときには、過食、アルコール、薬物、セックス、ギャンブル、買い物などに依存して現実逃避を図ることがあります。これらの行動は、現実の問題から一時的に逃れる手段として用いられますが、問題の解決にはならず、さらなる困難を招く可能性があります。

 

10. 自己感覚の希薄さと境界の曖昧さ

 

彼らは自己感覚が希薄であり、他者との境界が曖昧であるため、他者の感情が自分に入り込みやすくなります。これにより、自分自身の感情と他者の感情が混ざり合い、自己を見失うことが多いです。また、現実感が薄れ、自分が直接現実に関与していないかのような感覚に陥ることもあります。

依存性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)


面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的にしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じる。成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

(1)日常のことを決めるにも、他の人達からの有り余るほどの助言と保証がなければできない。

(2)自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をとってもらうことを必要とする。

(3)支持または是認を失うことを恐れるために、他人の意見に反対を表明することが困難である。

(4)自分自身の考えで計画を始めたり、または物事を行うことが困難である。

(5)他人からの世話および支えを得るために、不快なことまで自分から進んでするほどやりすぎてしまう。

(6)自分自身の面倒をみることができないという誇張された恐怖のために、一人になると不安、または無力感を感じる。

(7)1つの親密な関係が終わったときに、自分を世話し支えてくれるもとになる別の関係を必死で求める。

(8)一人残されて自分で自分の面倒をみることになるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている。

 

参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』医学書院

 

トラウマケア専門こころのえ相談室

論考 井上陽平

 

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