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幼児期のトラウマと夢|ドナルド・カルシェッド

ユング派のドナルド・カルシェッド Early Trauma and Dreams by Donald Kalsched [self help Audiobook ]の最初の部分を日本語訳しています。

 

トラウマの治療では、二つの世界を繋げます。一つ目は、内なる心の世界で、二つ目は、幼いときのトラウマを負った世界です。トラウマの治療というのは、個人的な経験を話し始めたときから始まります。それは患者の秘密事です。トラウマの定義は、ユングの影(自分が認めたくない自分の半身、否定的のもの、耐えられないもの、生きられなかった反面)みたいな経験です。耐えられない経験は、精神的に耐えられないことを指しています。

 

人は何かを経験したら象徴化できますが、トラウマはその象徴を超えたところにあります。また、トラウマは、通常の精神状態を超えたところにあります。トラウマというのは、亀裂が入るような経験で、分裂とか解離です。トラウマを経験したら、それまでの自己がときに破壊されることもあって、だけど、その人のパーソナリティは完全には崩れていません。

 

心というのは、物事を象徴する過程で出来ます。ユングが超越的機能というのは、それは象徴すること、夢見ることに見られます。心というのは、把握できないものですが、夢とか象徴は、人間の心の伝わらないものを伝えてくれます。ユングが言うところの一つの極は身体で、もう一つは心です。心と身体は違ったものとして捉えられていて、元型というのは、自己に影響を与えるイメージです。象徴や夢は、身体と心を繋げて、情動に働きかけるのが身体で、もう一方は心です。

 

ユングのいう影の経験は、最近まで、適切な理解をされていませんでした。なぜかというと、人々は自分の影の経験まで、きちんと覚えていません。影というのは、壁の外や内側の経験で、本人でさえも語りえません。なぜならば、耐えられないような経験は幼少期に起こりますが、意識はまだ成熟していません。耐えられない状態というのは虐待されたときなどに生じます。

 

トラウマというのは言語というよりも、もっと前の段階で出てくるものです。トラウマは、深い心や精神の分離したとこで出来る空っぽの状態で出てきます。一般的にいうところの抑うつのような状態です。トラウマを理解していくには、言語以前のその深い、自分に把握できない経験をブリッジさせるために夢、象徴が必要です。トラウマの経験というのは、身体とか関係性のなかに内面化されていて、言語的な記憶ではまだコード化されていません。トラウマの問題というのは、私たちは子どもの頃に何が起こっているのか本当に理解できず、子どもは自分たちの経験を言葉で説明できません。

 

このあと、カルシェッドは、幼少期の子どもがトラウマを負った状態を説明していきます。人格が分裂した状態になって、一つ目は、自分を守ってくれるような存在で、それぞれの子どもに、それぞれのダイモーン(善性、悪性の超自然的存在)がいます…