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阪神・藤浪イップス疑惑「リリースの感覚が無い」をトラウマ学視点から

(画像はCake6さん撮影/WikimediaCommonsより)

藤浪晋太郎投手が、本拠地開幕のマウンドで試合中に衝撃告白していた。

 

この試合、5回2失点ながら9四死球。

そして、今季の"象徴"となってしまったのが、5回に畠山の左肩に死球をぶつけ、

両軍入り乱れての大乱闘に発展した場面。

 

怒声が飛び交う中、マウンドに立ち尽くす右腕は、試合途中に捕手・梅野に告白した。

「直球のリリースの感覚が無いんです…」と

 

今季の藤浪は、1軍で59回イニングを投げて45四球、8死球と制球難で死球が多く、

イップスが原因か?と言われています。

 

ちなみにイップスとは

当たり前に出来ていたことが

精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし

突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことです。

 

ここでは藤浪本人がイップスかどうかは置いといて、人はトラウマの恐怖を受けると、身体は過剰に覚醒されますが、それと同時に麻痺するという生物学的メカニズムが働きます。ここでは、トラウマによる恐怖と過緊張に曝されることで、身体感覚や自己感覚が喪失していくメカニズムを述べていきます。

 

藤浪は大阪桐蔭のエースで高校時代に春夏連覇をしました。

そのあと阪神からドラフト1位で指名され入団しています。

高卒新人ながら初年度は10勝、2年目に11勝、3年目に14勝をあげています。

 

高校時代から甲子園球場で熱戦を繰り広げてきて、プロ野球では熱狂的な阪神タイガースファンの声援を受けてきました。

 

人間は過度に緊張する場面で、高いパフォーマンスを強いるうちに、思う通りにいかないことや、急なことや想定外のことが耐えられないこころの苦痛になり、トラウマ後の脳、身体的、心的回路が形成されてしまうことがあります。

それにより無意識的な身体の内臓感覚や皮膚感覚、筋肉の収縮に変化を起こして、自覚のないまま、身体の一部が硬直や凍りつきます。

 

つまり、脳、身体的、心的回路が異常な形で配線されてしまい、通常の状態に戻ろうとしても戻れなくなります。

 

イップスの原因については、

①大舞台で絶え間なく持続する慢性的な緊張というストレス

②逃げ場のない場面(投手ならマウンドから降りれない)

③恥をかくような場面(大観衆のヤジ、敵・味方やベンチの視線)で一流のパフォーマンスを強いること。

④デッドボールを当ててしまうことで相手の選手を傷つけてしまう恐怖

これらが複雑に絡み合ってイップスの原因になります。

 

過度な緊張に曝され続けることで、体は「闘争・逃走反応」にすっかり染まっていきますが、

一流のパフォーマンスを発揮し続けなければならないので自分の振る舞いを正しくコントロールしようとして、身体内部で起こっていることの自覚を麻痺させることを覚えていくようになります。

そして、玉が抜けてデッドボールを当てるという、想定外のことが起きると、胸が痛んで、恐怖に凍りつきます。

 

それ以降、バッターにデッドボールを当ててしまうという、想定外のことを恐れるようになり、バッターの視線が怖かったり、バッターに罵られたり、ファンに罵声を浴びせられたりして、身体が恐怖と怯えで固まって、本来の力を発揮できなくなります。

 

大舞台で、恐怖や不快感の方が強くなり、身体は過緊張になって、交感神経が過剰に高まると、背側迷走神経が働き、身体の一部が凍りつきます。

そして、身体性が無視され続けることで体の感覚が無いという原因不明の体調不良を生じて、今まで当たり前に出来ていたことが出来なくなります。

 

▶プロ野球選手のイップスとは、身体感覚の喪失とトラウマ学視点から